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僕自身がまだ「起業家として道半ばにある」という大前提はあるものの、EXITを1つのゴール(注1)と考えたときに、そこに続くいくつかのハードルは超えてきたと思っている。TBSのSASUKEに登場するウォールリフティング(重たい壁を次々と持ち上げ、くぐり抜けて進んでいくエリア)のようなイメージを僕は思い描いている。

自分と同じように重たい壁を持ち上げようとしている人がいたら、個人として応援したいと思っているし、相談を受けたらできる限り応えるようにしている。

先日も起業を志している学生さんからメッセで質問をいただき、回答した。このQ&Aが汎用的なコンテンツになるなと思ったので、今回ブログのかたちでアーカイブしておくことにしました。

注1)EXITはあくまでもゴールの1つであり、通過点でしかないことは注記しておきたい。


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Q1. AI×アパレルの領域で様々な企業がチャレンジする中で、ニューロープが支持を得ている理由は何ですか?(注2)

注2)著者が代表を務めるニューロープはファッション特化のAIを企業向けに提供するSaaS事業を展開していて、各所から評価やご期待をいただいています。

リスクテイクしてテクノロジー面でアドバンテージを取ったこと

ニューロープは2015年からAIの開発を始めています。実際にAIをリリースしたのが2017年なので、この間、1円も生み出さないAI開発にリソースを突っ込み続けたということになります。

ちなみにこの時点では「開発を続けた結果AIが実用のレベルに達するかどうか」は分かりませんでした。

「いけるかどうかわからない」という賭けの要素を持ちつつ、この分野に投資し続けたことが現在になって他社と比較したときに技術的な優位性を築けた源泉になっていると思います。

100%うまくいくと考えられるような領域には大手含む参入が相次ぐため、ある程度のリスクを織り込むことが1つの戦略になってきます。

ブランディングに力を入れていること

領域がファッションなので、コンサル上がりの優秀な人が「最適化したらファッションはもっと儲かりますよ」みたいな売り方をしていても、業界の人たちには刺さらなかったりします。そもそもファッションが好きではない人と「うまくいくかどうか確信の持てないプロジェクトを一蓮托生でやる」という判断はなかなか難しいものです。

ニューロープはブランドをリスペクトしているし、そのことをプレゼンの場、メディア露出の際などに何度もアナウンスしています。本心から思うことだけではなく、しっかりと伝えることも大事。

この成果も少なからずあって、「一緒にやろう」と手を取ってくださるブランドさんがいらっしゃる状況なのだろうと思っています。

Q2. 酒井さん自身が起業するまでに大切にした行動や考え方があれば教えていただきたいです!

結局自分ひとりでできることは高が知れているので、会社に勤めていた頃から社内でも社外でも、お客さんでも発注先でも、誠心誠意付き合うようにしていました。

個人ではなくチームで最大の成果を上げる練習が必要だったこと、将来的に独立したときにも一緒に仕事をしてもらえる関係を作ること、各分野のプロフェッショナルからその領域について学ばせていただくことが理由としてあげられます。

そしてチームで活動をしていくにしても、僕自身にまったく魅力がなければ優秀なメンバーがついてきてくれるはずがないので、自分のスキルを高めることにも相当時間を使いました。

中小企業診断士みたいな難関資格を取ったり、プラグラミングのスクールに通ったり、年500冊本を読んだり…。学んだことはできる限り業務に還元して、会社に貢献しながら実務経験を積むことも意識していました。

プログラミングを勉強したのは、エンジニアと円滑にコミュニケーションするためでもあります。(起業するならIT分野だろうという算段はつけていました。)

Q3. 起業する前と起業した後の自分で変わったところ、変わってないところはありますか?

「周りが超応援してくれるようになった」という変化はありました。

前職、過去の取引先から高校や大学のときの同級生、起業してから会った方々も含めて、「起業して頑張っている」ということに一目置いてくださっている方が少なくないように感じます。多くの先輩起業家にも、同志や後輩として目をかけていただいています。

僕自身は起業前も起業後もこつこつ頑張っているだけで内面に大きな変化がないことを考えると、これがいわゆる「社長特権」なのだと思います。立場のある方含めて普段お話する相手も多様になりました。

本からよりも人から学ぶことの方が情報の粘着性は高いものが多く、結果的に学びの質は圧倒的に良くなったなと感じています。

Q&A、受け付けています!

冒頭にある通り、僕個人は「頑張る人」を応援していきたいと思っています。

実務的にガリガリ動いてサポートをする相手は限られるにしても、メッセでご質問に応えるようなかたちであれば全力でコミットします。

TwitterのDMやメンション等でお気軽にご相談ください!

まず最初に断っておくと「起業するかどうか」「資金調達するかどうか」は、当人のモチベーションに依存するものだし、僕は一概にどちらが良いということを論じるつもりはありません。
僕自身も起業してからめっちゃ苦労しているし、それを乗り越えられるか、あとから振り返って良かったと思えるかは大いにパーソナリティに左右されることだと思います。
中には苦労せずにうまくいったベンチャーもあるでしょうが、そんなのは本当に一握りで、たった一度の人生を博打に投じることを僕は推奨する立場にはありません。
仕事が終わったら高校の頃からの友人と野球観戦に行ってビールを飲むような日々も素敵です。僕は不器用なのもあってそういう生き方を選ぶことができませんでしたが、毎日笑って過ごすことができたら、世の中の仕組みがどうなっているのかとかどうでも良くて、純粋に幸せを感じられるに違いありません。

前置きが長くなりましたが、その上で「経験的な優位性」という一面から起業するメリットについて今回は記事にまとめます。
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みんなのアクセスできない経験にアクセスすることの大切さ

みんなと同じことをやっていても、みんなと違ったことをするのは難しいでしょう。
みんなが読んでいるのと同じ本を読んでも、なかなか周りと差をつけることができません。
横並びを前提とした学校教育の弊害が指摘されることが度々ありますが、その根源には「同じインプットから多様性が生まれにくい」という主張があるはずです。

ベンチャーの基本は、他人の気づいていない市場の歪みに気づいて、どうやってそれをうまくビジネス化するかというところに尽きると思います。
じゃあ一体どうやったら人と違うインプットを生めるのか。
下記に「アクセスしにくい経験」を整理します。
  1. お金がかかりすぎてアクセスできない
  2. 違法性が高くてアクセスできない
  3. 学ぶことが困難すぎてアクセスできない
  4. 極めて属人的な情報のため流通しておらずアクセスできない
「2」は諦めましょう。
「3」については比較的誰もが手を出しやすく、それゆえにこれ単体だと参入障壁が低めでもあります。プログラミングなどが分かりやすい例ですが、弁護士・税理士・社労士のように市場が飽和してしまうようなケースもあります。
同族経営の是非は置いておくとして、二代目・三代目が最終的に経営者として優秀である例が散見されるのは、「1」と「4」にアクセスできる環境に身を置けるからではないかと思われます。
特定の業界に就職すると、その領域における「4」を得られるので、その領域で起業した際の成功確率は高めることができるでしょう。

構造的には以上のように整理できるかと思います。
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起業や資金調達は手っ取り早い解決策

起業するメリットとして「極めて属人的な情報のため流通しておらずアクセスできない情報」にアクセスしやすくなることが挙げられます。
僕はファッション領域という、それまで業務経験のない分野で起業しました。おかげで大変な苦労をしました。
一方で、起業した途端に様々な情報に恵まれることになりました。
代表取締役という肩書はそれなりに役立つもので、様々なベンチャーの社長さんやファッション業界の方々とお話する機会をいただくこととなります。
それまで僕は本をたくさん読んでいましたが、本に載っている情報の魅力が相対的に色褪せることになりました。それくらい目のさめるような勉強をさせていただいたし、未だにそういった機会が絶えません。

また、ベンチャーキャピタルから資金調達することは「お金がかかりすぎてアクセスできない情報」を手に入れるチケットになりえます。
実際にサービスを作ってみて市場に問うと、貴重なフィードバックを大量にいただくことができます。
最初に作ったサービスが順風満帆でなくとも、このフィードバックを元に次のサービスを作って成功したスタートアップは少なくありません。
サービスを作るのにはお金がかかります。
いくらあれば良いということは言えませんが、少なくとも1つサービスを作って空振りしたら倒産するというようなイチかバチかの勝負をしかけるとストレート負けしてしまう可能性が極めて高くなります。

というところで、起業や資金調達が「みんながアクセスできない情報」にアクセスするための手段として有効であることは比較的クリアになったかと思います。

あくまでも起業や資金調達は手段の1つにすぎない

もちろん手段としてこれがすべてではありません。
他にもアプローチ方法は色々と考えられるでしょう。
例えば『ビザスク』のようなスポットコンサルサービスは数万円で「4」を叶えてくれます。
とりあえず海外に住んでみるというような手も有効でしょう。
VCに就職するとリスクテイクせずにどんどん「4」を仕入れられるかと思います。
そう考えていくと「1」が一番手の届きにくい、裏を返せば差別化につなげやすい情報なのかもしれません。
「他にもこんな方法もあるよ!」というのがあればぜひ僕も実践したいので、NewsPicks等でご意見いただけると嬉しいです。

学生が起業を学ぶことのできる「ウィルフ」というビジネススクールがあります。
アントレプレナーイノベーションキャンプというイベントで代表の黒石さんとご一緒した縁で、先日メンターとして授業におじゃましてきたのですが、このビジネススクールのカリキュラムがなかなか奮っています。
先輩起業家からビジネスのノウハウ、プレゼン、資金調達などについて幅広く学びながら、受講期間中に3回、実際にビジネスを起こすというスパルタぶり。
1回目はインターネットを使って、2回目はイベントなど何かしらリアルなかたちで、3回目は制約を設けずに、実際にお金を稼ぐということをするそうです。それぞれ期間は2週間。
受講生によっては2週間で100万円以上の粗利を叩き出す強者もいるんだとか…。

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社会人経験が10年あったって、自分でビジネスをやれと言われてできる人なんて一握りだろうと思います。ポンと事業を始めて100万の粗利を出せる人なんてほとんどいないでしょう。
僕も、自分がそれをやれと言われたらちょっと憂鬱になってきます。

けれど、憂鬱になるようなプログラムだからこそ、大いに実用性があるのだと思います。
ビジネスをやることは大変だし、最初に立てた仮説はそうそううまくいくものではありません。やってみると意外と大変だぞということにすぐに気づく。やり方を変えてみてもなかなか状況は好転しない。悠長に構えていると1週間なんてすぐに過ぎます。
いよいよ慌ててできる限りの手を尽くして、ようやくちょろっと売上が立つ。その金額は、2週間普通にアルバイトしていたら稼げたであろう金額には遠く及ばないものだったりする。
自分の無力さに打ちひしがれていたら、後2回もこれがあるんだということを思い出す。考えるだけでも心が折れそうになる…。

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もう、まんま起業家が体験するような筋書きです。
このカリキュラムを最後まで走り抜けたら、知識としてのインプットの他、下記のような成果が得られるでしょう。

- 物事がなかなかうまくいかないことを経験する。
- 仮説がうまくいかない前提で、手を尽くすということを経験する。
- 心が折れそうな状況になっても持ちこたえてやりきるということを経験する。

いずれも勤め人だとなかなかできることではありません。
起業家の立場から見ても、起業家として効率的に鍛えられるであろうことは想像に難くありません。
学生に限らず、ゼロから1を生み出す経験がなかなかできない社会人が受けても大きく成長できることでしょう。
実際に卒業生で事業を立ち上げた例は枚挙に暇がなく、資金調達に成功している例もあるそうです。プログラムを通してモチベーションが同じ仲間と出会えるのも大きなメリットの1つとしてありそうです。
企業にいったん就職した卒業生たちについても、他の同期とは動き方が変わってくるのではないでしょうか。

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ちなみに僕がメンターとしてお邪魔した翌日からビジネスを始めた学生チームは、大学の上級生が使わなくなった教科書を下級生に販売する取引の仲介を展開。
チラシを巻いたり実際に呼びかけたりと様々な施策を打ったものの、これがなかなかうまくいかず、1週間でピボット。
残りの1週間はマーケティング支援事業に専念して盛り返し、最終的には2週間で46万円の粗利に着地したそうです。
1週間で見切りをつけてピボットしたことも、最終的にしっかりと利益を残したことも見事としか言いようがないです。普通にすごい…。

メンタリングさせてもらったチームの所属する31期生のインタビュー記事


学生起業には賛否あるかもしれませんが、個人的にはやったほうが良いと思ってます。
社会人になると自分の食い扶持を稼ぐ必要があり、家族ができると養う必要がありと、どんどん無茶をできなくなっていきます。
学生にはそういった社会人について回るリスクがありません。仲間も学生から募れば、無休でしゃかりきに働くという夢のようなチームを作れるでしょう。
社会人経験を積んだほうが良いかどうかということを考える必要はあんまりない気がします。学生の間に立ち上げてうまくいったらそれで良いし、うまくいかなかったら就職すれば良いだけでしょう。


そういうわけで、メンターという建前でおじゃましたものの、自分の方が良い刺激をもらって帰ってくることになりました。
ウィルフのカリキュラムはよく考えられているし、将来的にでも起業を検討しているという学生にはおすすめです。
周りの受講生たちが頑張ってビジネスを立ち上げていく中、乗り遅れるというプレッシャーから自然とチャレンジに駆り立てられるという構図に自らを放り込んでみてはいかがでしょうか!

※本文には事実とちょっと異なる部分があるかもしれないし、カリキュラム自体にも日々変わっていく部分があると思います。正確な情報は説明会等で仕入れてください!

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ピッチやらブログやら、細切れで情報発信してはいるのですが、酒井が何をしているのかまとまった記録を付けられていなかったので、あらためて今僕が取り組んでいる事業について書こうと思います。

僕は2014年1月にニューロープという会社を立ち上げ、3人のチームでCUBKI(カブキ)というウェブサービスを運営しています。

モデルさん、読者モデルさんを中心に現在120人くらいのタレントさんたちと提携しています。CUBKIでは、彼女たちのコーデに似ているプチプラ(注:低価格)のアイテムを買うことができます。憧れのモデルさんの着こなしを気軽に取り入れることができるのがポイントです。

マガジンサイトではスタイリストさんの書いたトレンド記事や、モデルさんのインタビュー記事を読むことができます。
夢展望さんと組んでファッションコンテストを実施したりもしています。

勝手に他サイトから画像を引用してサービスを展開しているベンチャーはたくさんあるし、それで成功しているところも少なくありません。
うちがそういったことをせずにいる背景には、正義感もありますが、"著作権を違反していたらタレントさんたちの協力を得られない"という事情も多分にあります。著作権を無碍にすると、コンテストやインタビューといった我々とタレントさんたちのコラボ企画が成立しなくなります。
著作権をクリアにして、きちんとコラボしていることがCUBKIの強みだと思っています。



話が少しだけ横道にそれますが、先日「一瞬の夏」という上下巻のノンフィクションを読みました。一度はチャンピオンに輝いていたボクサーが持ち崩し、4年のブランクを経てからまた王座を目指すストーリーです。特にボクシングに興味があったわけではないのですが、ノンフィクションが好きであることと、作家があの「深夜特急」の著者である沢木耕太郎さんだったことから手に取りました。
チャンピオンにでもならない限り、ボクシング一本で食べていくことはできません。更に興行側の都合が大きく、選手側にやる気があってもいつ試合を組めるのか分からない。ボクシングとは別に仕事をしながら、生活を切り詰めながら、いつあるのか分からない試合のためにコンディションを整え続ける必要がある。水泳やフィギュアスケートの選手が試合に向けて調整するのに苦しんでいることを考えると、そもそも「その試合がいつになるか分からない」というのは想像するだけで恐怖です。
そういった”しんどい日々"を切り抜けても、最終的に"勝ちか負けか"というシビアな未来に突き進んでいるところに、僕は起業家と重なる部分を感じました。どんなに頑張っても、相手も頑張っているわけだから、ダメかもしれない。人生を擲って打ち込んでもどうなるか分からない。
それでもボクサーも起業家も頑張り続ける必要があると思います。
「一瞬の夏」では主役のカシアス内藤の他にも数人、丁寧に描かれているボクサーが登場します。読んでいて感じたのは、勝つために頑張ってきたボクサーは"負けても美しい"ということです。反面で十分な調整もせず、 ファイトマネーを目的として勝つ気があるのかないのか分からないような体型でリングに上がるのは恥ずかしいし、そんな試合をしても本人が気持ちを消化できるはずがありません。
僕はこのことを他人ごととして突き放すことができません。お腹をたるませて最後の勝負に出られずあきらめていった起業家は少なくないし、その気持ちも痛いくらいに分かるからです。でも、それをやってしまったら志が折れてもとに戻せなくなってしまう気がします。
今のタイミングでこの作品を読めて本当に良かったと思います。

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検索クエリ数の推移

CUBKIを10月にリリースして以降、利用者は順調に伸び続けています。(上図参照)
今月末にはかなり大きな施策を打ちます。
来月頃にはiOSアプリもリリースする予定です。
また、現在はフリーのモデルさんたちがメインですが、芸能事務所さんとの提携にも動き出しています。例えばですが「ローラさんのコーデをプチプラで買える!」と言えばサービスとして分かりやすいし、多くのユーザーさんに支持されるサービスになるからです。(ここは何が何でもはずせない部分だと思っています。芸能事務所さんとつながりのある方がいらっしゃればぜひご紹介ください!)

勝ちにいきます。
今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします!

(繰り返しになりますが、芸能事務所さんとの提携を進めています。提携することで、芸能事務所さんにもすごく分かりやすいベネフィットを提供できます。簡単に言うと、現在様々な新興メディアがタレントさんの著作物にフリーライドして収益を上げています。これをオフィシャル化して、収益やトラフィックをしっかりとタレントさん、事務所さんに還元する仕組みを作ります。ピンときた方はFacebookでもメールでもご連絡くださいませ!)

起業家のバックグラウンドとして、プランナー、コンサル、エンジニアは良く耳にしますが、なぜかデザイナーはあまり聞かないような気がします。デザイナーが起業しようと思わないのか、起業家がデザインをスキルとして選ばないのかは分かりません。
かく言う僕はプランニングやディレクションの仕事をしつつも、デザインも結構がっつりやってきました。学生の頃からアルバイトでポスターやチラシのような紙もののデザインをしてきたし、社会人になってからはブランドサイトやアプリのようなPC・スマホ媒体のものも手がけています。

コンサルやエンジニアと比較してどちらが良いということは一概には言えませんが、デザイナーにはデザイナーの良さを時間しているので、「デザインができて良かった」と思うポイントをデザイナーの立場から書き留めたいと思います。

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デザインができると色々なプロジェクトに参画できる

イベントをするにしても、ウェブサービスを作るにしても、リアル店舗を運営するにしても、デザイン的なタスクは必ず発生します。IoTだろうがロボットだろうがデザインが欠かせません。
このためプロジェクトに一人はデザイナーが必要になります。デザインができると色々なプロジェクトに首を突っ込めるのです。
デザインは汎用性の高さが特徴で、iOSでもAndroidでもウェブでもデザインのレイヤーに言語の違いはありません。情報誌でも看板でもバナー広告でも同じ言語で取り組むことができます。
おかげで僕は様々なプロジェクトを経験できたし、そのプロジェクトを通して多様なメンバーとチームを組み経験を積むことができました。

少人数のスタートアップでもデザインを内製できる

多くの場合、スタートアップは何かしらのプロダクトを作ると思います。
特にウェブサービスやアプリを開発するような場合、「デザイン」と「開発」を比較すると、「開発」の方が圧倒的にタスク量が多くなります。感覚的には1:20とか1:50とかそれくらいの比率になります。
これで何が起きるかというと、エンジニア2人、デザイナー1人といったチームを組んだときに、デザイナーの稼働が埋まらないという事態が発生します。少人数体制の間はデザイナー1人雇うほどの仕事量はないのです。
けれどデザインを内製するかどうかでPDCAのスピード感がまったく違ってくるので、「デザインを内製化したい」と嘆くスタートアップは少なくありません。
そんなときに自分でデザインができると便利です。サービス改修時に追加パーツをさくっと作ったり、Facebookページのヘッダーや広告用のバナーなんかもぱぱっと作ることができます。タスクとしてはデザインの他にも営業周りやバックオフィス、オペレーションなどがあるので、仕事量はうまく調整することができます。

プレゼン資料を作り込める

スタートアップには何かとプレゼンする機会があります。ピッチイベントに立つとき、ベンチャーキャピタルさんと打ち合わせするとき、営業先にプロダクトを提案するとき。
プロダクトの状況も刻々と変わるので、資料は随時アップデートしていく必要があります。
そんなときデザインに慣れていると、スピーディに体裁を整えてプレゼン内容を魅力的に見せることができます。
僕はあまり口がうまい方ではないので、資料に代わりに説明してもらえるのには助かっています。

どうやってデザインを習得するか?

起業家がデザインというスキルを持つ魅力については分かっていただけたかと思います。
では「どうやってそれを習得したら良いのか」という話を最後に少しだけします。

イラレやフォトショ(注:画像編集ソフト)の操作方法についてはいくらでもハウツー本が出ているのでそれを読んだら良いと思います。そもそもアプリケーションが使えるかどうかということはデザインをする上で本質的な問題ではありません。
それよりもレイアウトのテクニックを知っているかどうかというところが重要です。マージン、配色、視線誘導といった理論的なことを何よりも先に学ぶ必要があります。このレイアウトのテクニックはデザインについて書かれた本を読んだら習得できます。僕は大学2年生の夏休み、来る日も来る日も図書館にこもってデザインの本を読み続け、デザイナーを名乗るようになりました。デザインの基礎理論が分かっていれば他のデザイナーが作ったポスターやウェブサイトの構造を読み解けるようになって、要素を抽出して真似できるようになります。真似を通して手法を血肉に変えていけます。

起業を検討なさっている方、まだ猶予があるのであれば今のうちにデザインを習得しておくのはいかがでしょうか!

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会社を立ち上げてからもうすぐ一年が経とうとしています。起業以前からの知り合いに会うと「会社を立ち上げて楽しいか」というようなことを聞かれます。
自分の心境を口頭でうまく表現する自信ができなくて、いつも「ぼちぼちやっているよ」と適当な言葉で濁してしまいます。この1年間濁し続けてきた心境を明文化するために記事を書こうと思います。

起業してからと言うもの、基本的に僕は憂鬱です。安泰からは程遠く、考えても考えても足りない。失敗したらどうしようという不安が常にあって、実際にうまくいかないことがたくさんあります。乗り越えられるか分からない壁が何度も立ちはだかって、すれすれのところで乗り越え続けているけれど、限りある時間は着実にすり減っています。うまくいくこともあるけれど、それに喜んでいる暇はありません。
こんなに憂鬱で満たされた生活を送る合理性は何でしょうか。
法人の寿命を意識しているうちに、自然と個人の寿命についても考えるようになりました。人生は一度しかありません。その人生を何に使うかというテーマについて考えたとき、今の時間の使い方は果たして正しいのだろうかということを考えます。

結論から言うと、50年後に今を振り返ったときに後悔するかというと、そうではない気がしています。憂鬱は必ずしもネガティブのサインではありません。走ると息が苦しくなりますが「だからトレーニングはしない方が良い」という論理にはなりません。
アンドリュー・ワイルズがフェルマーの最終定理を証明したように、羽生善治が将棋界の一代を築いたように、三島由紀夫が純文学の境地に達したように、とめどない憂鬱を受け止めて進んだ先にある希望を見たい。そのために時間を使えるのであれば、それは幸せと言っても差し支えないと思います。
僕は学生の頃まで「純文学作家になりたい」という夢を持っていて、太宰治の「葉桜と魔笛」や村上龍の「イン ザ・ミソスープ」を読んだとき、こんな作品を生み出せたら死んでも悔いはないだろうなと純粋に思いました。その頃から根本的な価値観は何も変わっていないのだと思います。

憂鬱な顔をした僕を見ることがあるかもしれません。そのときはこのエントリーを思い出してください。
僕は元気にやっています。

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