カテゴリ: 働き方

会社を立ち上げてからまもなく3年になろうとしています。
「3年」という数字には、いろいろと曰くがあります。
新卒入社した会社には3年はいた方が良いとか、3年以内に倒産する会社の割合は70%とか…。

自身を振り返っても、3年目を節目に感じることがよくあります。
高校生のとき小説を書き始めて3年目には文章がかなり洗練されてきて、ストーリーや構成といった評価の難しい要素を磨くフェーズに入り、自分の成長を実感するのが難しくなりました。
大学に入り学園祭やフリーマガジンを発行するサークルに打ち込みましたが、3年目にはこなれてきて、4年目はなくて良いなと感じました。院に進学しなかったのも、やりきった感が要因としてありました。
新卒で入ったマイナビでも、3年目には大体の業務を理解できた状態になっていて、かと言ってマネージャーになるまで何年も待つ気になれず転職しました。

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そして今、起業して約3年の地点にいます。
1年目は新しい事業を描くところから、ユーザーインタビュー、プロダクト作り、フィードバックを受けてのピボット、アルバイトチームでのオペレーション化、総務経理と経験のなかったことばかりでとにかく学びながら手当たり次第に物事を進めていました。
2年目には前年にうまくできなかったことをもっとうまくやったり、マネタイズに向けた営業や他社とのアライアンスの取り組み、新しい施策のテストマーケなど、フロンティアは広がっていました。
ところが3年目になると、目新しいことが途端に減ります。新しい取り組みがあっても、これまでやってきたことの応用であまり苦心することなくできてしまう。
例に漏れず、自分の成長の停滞を感じるようなところがあります。

3年目には、1・2年目と比べるとどうしても成長曲線が鈍化します。器用な人はこのスパンがもっと短いかもしれません。
3年で転職したり、3年で踏ん張りが続かなくなって会社を倒産させたりするのは、この停滞感と無縁ではないと思います。
成長することはやはり楽しい。どんなに公器を目指していても人は人なので、楽しいことが楽しくなくなると身が入らなくなってしまうことは否めない。
プロのアスリートになってくると0.01%の差が勝敗を分けるので成長曲線が鈍化しても継続することに価値がありますが、多くのビジネスマンにこのことは当てはまらないでしょう。スポーツに比べて能力以外の変数が多すぎて、0.01%伸ばすことの費用対効果がそんなに高くないためです。

じゃあどうしたら良いんだということを考えると、この3年目の壁を認識して、フロンティアを意識的に見つけにいくことが大切なのではないかと思います。
転職するのが一番分かりやすいですが、そうでなくとも自分のポジションを変えたり、フォーカスするテーマを大きく変えたりする。やり方を変えると大きなストレスがかかるので、これは意識しないとなかなかできない。
同じことを繰り返していても会社自体も停滞してしまうので、この取り組みは理にかなっているような気がします。安定に対して意図的に緊張感を持ち込むということは、会社に限らずあらゆる組織に苦い良薬となるでしょう。

今回言いたかったのは、停滞の構図を理解して、手を打つべきだということです。
自分の停滞のサイクルを理解していたら、そもそも3年目の停滞期を無為に過ごす必要がなく、それこそ2年で転職したり、3年目には新しいポジションを目指したりして成長曲線を右肩上がりに保ち続けることができます。
成長すること自体を目的化しても仕方ないけれど、成長することは楽しいし、できることは確実に増えます。

僕も今は人脈や癒着といった、自分が苦手としていて避けて通ってきたテーマに取り組もうとしています。
成功者たちには参謀やパトロン的な存在がつきもので、そこには合理性を感じており。このテーマについてはまたの機会に。
特に先輩のアントレプレナーさんとお話をしたいと思っています。「時間取っても良いよー」という方、Facebook等でお気軽にご連絡くださいませ!

ノマドワークを始めてもう2年半になります。
しかし僕はどうも一日中自宅で仕事をするということができません。
午前中だけとかであれば問題ないのですが、終日となると猛烈に疲弊します。
身体を動かさないこと、陽の光を浴びないこと辺りが関係しているのではないかと思います。

家でもない、オフィスでもないとなると、どこで仕事をしたら良いのでしょうか。
結論から言ってしまうと、ファミレス、中でもガストをリコメンドします。
今回はガストの素晴らしさを記事にまとめました!

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1.ドリンクバーがある

これが何より。
カフェだとコーヒー1杯、ラージサイズを頼んでも、ちょっと長居をすると喉が乾いてきます。
体質として吸収が悪いのか、僕は普段からやたら水分を取るので、余計です。
ドリンクバーがあると喉の渇きは気にせずに仕事に集中できます。
僕は砂糖の入っていない炭酸水を主に飲んでいます。

2.電源がある

これははずせないでしょう。
ジョナサンにもありますが、数が少なく埋まっていることが多いです。
ガストには結構な量の電源があります。(あくまで個人調べ)

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3.席が広くてゆったりしている

「サードプレイス」を標榜しているカフェがありますが、座り心地の悪い椅子で回転率を上げようという魂胆があるような気がして、いけ好かないところがあります。(あくまでも個人の意見です。)
ファミレスの席はゆったりしていて、テーブルも広く、非常に快適です。

4.コストパフォーマンスが良い

クーポンを使うと、スイーツ+ドリンクバーでも400-500円くらいに収まったりします。
カフェだとコーヒー1杯でこれくらいの値段だったりするので、コスパで考えると比較になりません。

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5.ほどよい雑音と人の視線

自宅と違って「他の人がいる」というだけでほどよい緊張感があり、背筋が伸びます。
人によるとは思いますが、僕は集中力を保ちやすいです。

6.糖質制限しやすい

糖質制限にチャレンジしている、またはチャレンジしたことのある方なら分かると思いますが、昼食・夕飯難民になりやすいです。
通常の飲食店では炭水化物を避けて通るのは困難です。
コンビニやスーパーで肉やブロッコリーを買うのも良いですが、ファミレスならライスなしでステーキを注文できます。からあげとサラダなど、サイドメニューを組み合わせるのも良い感じです。

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僕はノマドワークを始めてからはもちろん、その前に中小企業診断士の勉強をしたりしているときなんかもファミレスを重宝していました。僕にとってのサードプレイスになっています。
念のための注意ですが、都心の混み合うファミレスに長居するのは自粛しましょう。繁忙時もちょっと空席があるくらいの店舗を見つけられるとお店とwin-winの関係を築きやすいと思います。


さて、ニューロープでは月水金はオフィス、火木はノマドというワークスタイルを取っています。
毎日出社して移動に体力と時間を費やすのはもったいないけれど、コミュニケーションも大切。そんなバランス感覚でやっています。
効率性や個人の時間を大切にする社風に惹かれるエンジニアの方は、ぜひニューロープにご応募ください!

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有限の時間を活かして最大限の仕事をして最大限成長するために、仕事の効率化はロマンと言っても差し支えない命題です。
酒井が今まで試行錯誤してきて「これは間違いない!」というアイテムをご紹介します。
自己投資と考えたらどれも安いものばかりです。

アミノバイタル

多くのビジネスマンはジョギングや筋トレなど、パフォーマンスを保つために日常的な運動をしているのではないかと思います。
そうでなくても営業で重たいパソコンを持って歩き回ると(アポが過密なときは走り回りますよね…)、意外と体力を消耗するものです。
「疲れたな」と思ったときに飲んでおきたいのがアミノバイタル。飲んでおくと翌日の疲労回復が段違いに変わってきます。
 


モバイルバッテリー

Macbook proの寿命を+3時間伸ばすことのできるバッテリー。少し重たいですが、外出の多い方にはすごくオススメ。電源のあるカフェを探し回ると結構時間をロスしますよね。
 


iPad mini

タブレットを持っていない人が意外と身の回りにたくさんいます。そこそこ値が張る割にはスマホとの差がさほど感じられないからかもしれません。
改めてiPad miniの使えるポイントをまとめておきます。
・プレゼンに使える:いちいち資料を印刷して何部も持ち歩かなくても、iPadがあればさっと見せることができます。資料は後から電子メールで共有したほうが、お客さんも管理しやすいので助かります。
・ディスプレーになる:"Air Display”というアプリケーションを使うと、iPadをサブディスプレーとして使えるようになります。出先のカフェでもデュアルディスプレーで作業できるのですごく便利です。
・読書に使える:よく本を読む人は一日に3-4冊持ち歩いていると思います。iPadなら1つ持ち歩けば十分だし、電車で片手でページがめくれるし、蔵書の管理も楽にできます。
・メモに使える:ちょっとしたメモを取るときは、iPad×Evernoteが快適です。(iPhoneだとちょっと厳しい)
 


革張りバインダー

革表紙の高級感溢れるバインダー。(なのに価格は¥1,300とリーズナブル!)
テーブルが狭くても膝の上でメモが取れるし、取引先にいただいた資料をさっとしまえるのでスマートです。半分実用で半分は見栄ですが、見栄も結構大事ですよね。
 


ダンベル

家でそこそこハードな筋トレができる一つ10kgのダンベル。例えばガイアの夜明けやWBSを見ながらでも筋トレができます。人は基本的に分散処理ができない生き物ですが、身体的な運動と頭の運動だけは難なく同時並行できます。
インプットしたい。でも健康にも気をつけたいという人にうってつけ。
※我流だと筋を痛めます。Tarzanなどで正しいダンベルの使い方は学んでおきましょう。
 


ウエストポーチ

ジョギング時にiPhoneを持ち歩くことのできるウエストポーチ。僕は以前肩につけるタイプのものを利用していましたが、どうしても付けている方の肩に負荷がかかってしまうので、ウエストポーチが断然おすすめです。
ジョギングしながらiPhoneで英語なりオーディオブックなりを聴くことができます。
オーディオブックはFeBe(http://www.febe.jp/)がおすすめ。



今後も試行錯誤を続けていくので、「これは」というものがあればアップデートしていきます!

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最近「若者が結婚を敬遠している」という切り口のエントリーが増えています。結論としては「家庭を持ち、子どもを育てることが金銭的に不安」というものが大半。
結婚することは本当に金銭的なリスクにつながるものなのでしょうか。

僕は2013年末に入籍しました。色々と経緯はあるのですが、結果的には起業とほぼときを同じくして家庭を築くことになりました。
当初は僕自身も言い知れない不安を抱えていました。
「事業が失敗して妻を巻き込んだらどうしよう」
「家庭があって本当に仕事に打ち込むことはできるのだろうか」
実際に生活を始めてみてそれが杞憂であるとすぐに気づきます。

結婚しても生活コストはそんなに上がらない

まず、結婚したからと言って生活コストが上がるわけではありません。これは当たり前の話です。家賃も食費も光熱費も、共働きであれば折半することになるのでむしろ負担は軽減されます。家具家電もそんなに買う必要のあるものはないし、イケアやオークションを使えば、許容範囲の中でものを買うことができます。
子どもができてからも、試算してみると状況は変わりません。子どもの生活費は高が知れているし、当面は義務教育だし高校も公立に入ってもらえば教育費はかかりません。見えている出費としては保育や塾くらいで、後者は独学でも何とかなります。(僕は塾をほとんど利用しませんでした。)
何にせよ一時的な出費は均せば大したものにはならないしある程度コントロール可能なので、家賃や食費のような固定費がどうなるのかを考えましょう。
仮に事業に失敗しても、またサラリーマンに戻ればほとんど支障がないことが分かります。

結婚しても仕事のパフォーマンスは下がらない

次に「仕事に打ち込めるか」という論点。起業家に限らずビジネスマンはキャリア的な観点から結婚する・しないで悩む人も多いのではないかと思います。
半年くらいの短期決戦であれば独身の方が有利です。結婚すると毎日会社に泊まり込んで仕事に明け暮れるということができません。(できないと言うか推奨されないと言うか)
ただ、個人的な経験から「仕事以外何も顧みない」という状況は、続けられて半年くらいだと考えています。身体がついていかなくなってあらゆるパフォーマンスが落ちてくるからです。反面でパートナーと規則正しい生活リズムを作り、健康的な食生活を続けていると、長期的にパフォーマンスを維持して事業に取り組むことができます。(精神的な支えもありがたいです!)
家で仕事をすることもできるので長時間労働と家族との時間を両立することは可能だし、バリキャリ系の世界にどっぷりつかっていると価値観がマジョリティからかけ離れていってしまうのでちょっと街に出かけるようなことも、起業家として大事だと思っています。(「努力せよ!」「自己否定せよ!」「人脈開拓せよ!」みたいな人が作ったサービスにマジョリティがついていくとは個人的に思えません)

考えるなら「唯ぼんやりとした不安」を数値化してから考える

実際に周りの起業家には結婚している方が少なくありません。話を聞くと皆さん"倒産した際にどうするか"ということもしっかりと考慮した上で、「リスクを許容できる」という判断をしています。
芥川龍之介ばりに「唯ぼんやりとした不安」を抱えているだけでは結婚にネガティブになります。実生活を想定し、大まかにでも生活コストを試算したら案外お金がかからないことはすぐに分かります。
「唯ぼんやりとした不安」をまずは数値化する。それが許容できるかどうか判断すれば、多くの人が結婚に対するネガティブな印象を払拭できるのではないかと思います。
ビジネスでは当たり前のようになされていることなのに、私生活になるとこれが急にできなくなる少なくありません。

結婚が敬遠される理由は他にもあると思いますが、ネガティブなイメージは調味料のように撹拌して他の要素にもまんべんなく影響を与えるものだと思うので、そこに焦点を当てて考えてみました。

起業家のバックグラウンドとして、プランナー、コンサル、エンジニアは良く耳にしますが、なぜかデザイナーはあまり聞かないような気がします。デザイナーが起業しようと思わないのか、起業家がデザインをスキルとして選ばないのかは分かりません。
かく言う僕はプランニングやディレクションの仕事をしつつも、デザインも結構がっつりやってきました。学生の頃からアルバイトでポスターやチラシのような紙もののデザインをしてきたし、社会人になってからはブランドサイトやアプリのようなPC・スマホ媒体のものも手がけています。

コンサルやエンジニアと比較してどちらが良いということは一概には言えませんが、デザイナーにはデザイナーの良さを時間しているので、「デザインができて良かった」と思うポイントをデザイナーの立場から書き留めたいと思います。

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デザインができると色々なプロジェクトに参画できる

イベントをするにしても、ウェブサービスを作るにしても、リアル店舗を運営するにしても、デザイン的なタスクは必ず発生します。IoTだろうがロボットだろうがデザインが欠かせません。
このためプロジェクトに一人はデザイナーが必要になります。デザインができると色々なプロジェクトに首を突っ込めるのです。
デザインは汎用性の高さが特徴で、iOSでもAndroidでもウェブでもデザインのレイヤーに言語の違いはありません。情報誌でも看板でもバナー広告でも同じ言語で取り組むことができます。
おかげで僕は様々なプロジェクトを経験できたし、そのプロジェクトを通して多様なメンバーとチームを組み経験を積むことができました。

少人数のスタートアップでもデザインを内製できる

多くの場合、スタートアップは何かしらのプロダクトを作ると思います。
特にウェブサービスやアプリを開発するような場合、「デザイン」と「開発」を比較すると、「開発」の方が圧倒的にタスク量が多くなります。感覚的には1:20とか1:50とかそれくらいの比率になります。
これで何が起きるかというと、エンジニア2人、デザイナー1人といったチームを組んだときに、デザイナーの稼働が埋まらないという事態が発生します。少人数体制の間はデザイナー1人雇うほどの仕事量はないのです。
けれどデザインを内製するかどうかでPDCAのスピード感がまったく違ってくるので、「デザインを内製化したい」と嘆くスタートアップは少なくありません。
そんなときに自分でデザインができると便利です。サービス改修時に追加パーツをさくっと作ったり、Facebookページのヘッダーや広告用のバナーなんかもぱぱっと作ることができます。タスクとしてはデザインの他にも営業周りやバックオフィス、オペレーションなどがあるので、仕事量はうまく調整することができます。

プレゼン資料を作り込める

スタートアップには何かとプレゼンする機会があります。ピッチイベントに立つとき、ベンチャーキャピタルさんと打ち合わせするとき、営業先にプロダクトを提案するとき。
プロダクトの状況も刻々と変わるので、資料は随時アップデートしていく必要があります。
そんなときデザインに慣れていると、スピーディに体裁を整えてプレゼン内容を魅力的に見せることができます。
僕はあまり口がうまい方ではないので、資料に代わりに説明してもらえるのには助かっています。

どうやってデザインを習得するか?

起業家がデザインというスキルを持つ魅力については分かっていただけたかと思います。
では「どうやってそれを習得したら良いのか」という話を最後に少しだけします。

イラレやフォトショ(注:画像編集ソフト)の操作方法についてはいくらでもハウツー本が出ているのでそれを読んだら良いと思います。そもそもアプリケーションが使えるかどうかということはデザインをする上で本質的な問題ではありません。
それよりもレイアウトのテクニックを知っているかどうかというところが重要です。マージン、配色、視線誘導といった理論的なことを何よりも先に学ぶ必要があります。このレイアウトのテクニックはデザインについて書かれた本を読んだら習得できます。僕は大学2年生の夏休み、来る日も来る日も図書館にこもってデザインの本を読み続け、デザイナーを名乗るようになりました。デザインの基礎理論が分かっていれば他のデザイナーが作ったポスターやウェブサイトの構造を読み解けるようになって、要素を抽出して真似できるようになります。真似を通して手法を血肉に変えていけます。

起業を検討なさっている方、まだ猶予があるのであれば今のうちにデザインを習得しておくのはいかがでしょうか!

11月に発売された母のスタンプ(気まぐれニャンコたち)は、翌日にはクリエイターズスタンプのトップ100位以内にランクインし、お金をかけてプロモーションを打っているわけでもないのに、ユーザーに使われ、使われることで広まるサイクルで、じわじわと順位を上げていきました。
LINEスタンプはその競争率の高さから「博打」と見なされることもあります。実際に「適当に作ってアップしてみたらぼろ儲けしました」という人も少なくないようですが、そうやって「博打で成功した人」と「着実に積み上げてきて成功した人」とは分けて考える必要があります。前者には再現性がなく、後者には再現性があります。僕の母はどちらかというと不器用な後者であり、成功までには明確な道のりがあります。この道のりには一定の情報価値があると個人的に思い、僕なりに分析して記事にまとめることにしました。

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1.イラストの技術をずっと磨き続けてきたこと

母はもともと請け負い仕事でイラストを描いていました。「描きたい絵と仕事絵のギャップがあること」を原因に仕事の請け負いをやめた時期もあったけれど、その間も絵を描くこと自体は決してやめませんでした。「シェ プッペ」というアンティークショップを経営しながら、家事をしながら、忙しい時期でも言い訳することなく合間の時間を寄せ集めては毎日何時間も画材と向かい合っていました。
母の絵はすごく独創性が高いわけでもなく、有名イラストレーターのように商業とマッチしているわけでもないけれど、10年、20年というスパンで繊細な水彩画・色鉛筆画はただただ真摯に磨かれていきました。
水彩から色鉛筆に持ち替えたり、「自分の描きたいモチーフ」に限って仕事絵を再開したりといった”トライ”も大切にしていました。成人した子どもが2人もいるような年齢からPhotoshopやIllustrator(注:画像編集用のソフトウェア)の使い方をマスターして、ポストカードを作ったり、色調整やレイアウトの要素を取り入れて創作の幅を広げてきました。

母は時間をかけて細かく描き込むために、紙の目の細かい"ケント紙"という画材を使っています。このため日が沈んで室内が暗くなると、絵のディテールが見えなくなって描けなくなってしまいます。冬が来て日中が短くなるたびに、母はそのことを残念がります。それほどにイラストを中心に据えた生活を送っています。

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2.「見る人」からのフィードバックを大切にしてきたこと

アートの分野では商業における需給バランスが悩ましい問題です。才能があって努力をしていても「商業に合わない」という理由で絵とは別に食い扶持を持つ必要に迫られるアーティストが毎年美大から輩出され続けています。若手アーティストの集まる展示会を見に行くと、その完成度や芸術性の高さに感動させられるけれど、商業的に必要とされるのはその中のごく一部です。
「芸術と商業の折り合いをどう付けるか」はこれまでも議論されてきたし、これからもたくさんの人が頭を悩ませる問題だと思います。

母は自分の描きたい絵だけを描き続けながらも、描くことだけに満足することなく、個展を開いたりウェブサイトで発信したりと、常に「見られる」ことにも気を配っていました。ビジターの感想を聞いたり、ウェブサイトのアクセス履歴を見たり、ポストカードを作って販売したりすれば「どのイラストが人気か」ということが多面的に分かります。
自信作に人気がないことに悩んだりもしながら、発信することでフィードバックを得て、マーケットの感覚を母なりに学び続けています。

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3.ファンのコミュニティをつくり続けてきたこと

個人の作家を成功に導くのはファンです。1:nの関係を大きくしていくことが作家として成功するための鍵であり、ここに取り組まない限りは請け負いで「1枚いくら」の仕事をしていく他ありません。

個展やグループ展といったアナログから始まり、mixiのコミュニティで意見交換の場を作ったり、Facebookページで創作活動を発信したりと、トレンドにキャッチアップして母はコミュニティ作りを続けてきました。
他にもブログ・pixiv・Pinterestと時代の流れにあったツールを愚直に取り入れてきたこと、そこで丁寧な運営を続けてきたことがファンの基盤を作り、少しずつ、着実に実を結んできました。
LINEスタンプに取り組んだこともその延長上にあります。このスタンプがより多くの人の目に留まることで、ファングループがまた一回り成長していくのだと思います。

さいごに:母がLINEスタンプをヒットさせるまでに回してきたサイクル

母は技術を磨き続け、マーケットの感覚を知り、時代に合ったツールでコミュニティを作り続けてきたことで、LINEスタンプをヒットに結びつけることができました。
技術があってファンの目を意識していたからこそコミュニティを作ることができて、コミュニティがあったからこそ初期にスタンプをランクインさせることができました。ファンの目を意識していたからこそ実際に使われて、使われることを通して広まっていくというサイクルが生まれました。博打とは違って、このサイクルには背景があり、一定の再現性が認められます。
ただし、イラストカテゴリでこのサイクルを生むことができる人は現実問題としてわずかだと思います。感性と商業の折り合いをつけることは難しく、長い目で見たら正しい方向に進んでいたとしても成果が出るまでに気の遠くなるような時間がかかります。「水をあげても肥料をまいても10年間芽が出ない」ということが起きたときに、それでも続けられる人はほとんどいません。

何年もひっそりとしていた土を耕し続けた母が一定の成功にこぎ着けられたことは、その姿を近くで見ていた僕から見て本当に喜ばしいことです。このまま流れに乗って作家としての活動の幅を広げていけば、描きたい絵を描いて、それを仕事にしていくことができます。ファンの基盤があるからこそ再現性があり、着実な進歩があります。
この記事が読者やイラストレーターにわずかばかりでも勇気を与えられること、母のファンを少しでも広げられることを願って筆を置きます。


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とてもかわいい猫のスタンプ。このスタンプで謝られたりしたら許さざるを得ないです…!


Facebookページ:Seiko Ogisho Art Gallery
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母の創作活動を発信しているFacebookページ。猫、小鳥、少女、スイーツ、植物画がメインです。

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会社を立ち上げてからもうすぐ一年が経とうとしています。起業以前からの知り合いに会うと「会社を立ち上げて楽しいか」というようなことを聞かれます。
自分の心境を口頭でうまく表現する自信ができなくて、いつも「ぼちぼちやっているよ」と適当な言葉で濁してしまいます。この1年間濁し続けてきた心境を明文化するために記事を書こうと思います。

起業してからと言うもの、基本的に僕は憂鬱です。安泰からは程遠く、考えても考えても足りない。失敗したらどうしようという不安が常にあって、実際にうまくいかないことがたくさんあります。乗り越えられるか分からない壁が何度も立ちはだかって、すれすれのところで乗り越え続けているけれど、限りある時間は着実にすり減っています。うまくいくこともあるけれど、それに喜んでいる暇はありません。
こんなに憂鬱で満たされた生活を送る合理性は何でしょうか。
法人の寿命を意識しているうちに、自然と個人の寿命についても考えるようになりました。人生は一度しかありません。その人生を何に使うかというテーマについて考えたとき、今の時間の使い方は果たして正しいのだろうかということを考えます。

結論から言うと、50年後に今を振り返ったときに後悔するかというと、そうではない気がしています。憂鬱は必ずしもネガティブのサインではありません。走ると息が苦しくなりますが「だからトレーニングはしない方が良い」という論理にはなりません。
アンドリュー・ワイルズがフェルマーの最終定理を証明したように、羽生善治が将棋界の一代を築いたように、三島由紀夫が純文学の境地に達したように、とめどない憂鬱を受け止めて進んだ先にある希望を見たい。そのために時間を使えるのであれば、それは幸せと言っても差し支えないと思います。
僕は学生の頃まで「純文学作家になりたい」という夢を持っていて、太宰治の「葉桜と魔笛」や村上龍の「イン ザ・ミソスープ」を読んだとき、こんな作品を生み出せたら死んでも悔いはないだろうなと純粋に思いました。その頃から根本的な価値観は何も変わっていないのだと思います。

憂鬱な顔をした僕を見ることがあるかもしれません。そのときはこのエントリーを思い出してください。
僕は元気にやっています。

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大学院卒業と同時に独立した友達


大学の頃の同級生に、院の卒業と同時に就職せずそのままフリーのアニメ監督になった人間がいます。
卒業していきなり独立することの是非を問う議論は昔からありますが、今回そこは焦点ではありません。
彼は学生の頃から外部企業の仕事を請け負っていたこともあり、クライアントもパートナー(アニメーターさんなど)も十分に確保できていて、最初からオフィスも構えてビジネスを軌道に乗せることができました。

僕は院には行かずサラリーマンになったので、その頃すでに3年目。ある程度決裁権をいただいていたこともあり、その友達を応援するつもりで仕事をお願いしました。最初は漫画の表現を利用したDMを制作する軽めのお仕事でした。
他のフリーランスや制作会社さんと仕事をすることはそれまでにも何度かありましたが、驚かされたのは彼のレスポンスの早さ、段取りの迅速さ、企画の提案力、コミュニケーション能力です。軽く概要を伝えただけですぐにスケジュール感や絵コンテ付きの企画が返ってきて、その勢いで面白いくらいとんとんと制作が進んでいきました。
応援するつもりが逆に助けられてしまったのです。このとき彼が軌道に乗った理由がよく分かりました。途中から僕自身がリピートしたい気持ちでいっぱいになっていました。


独立してうまくいく人、苦戦する人


アニメ監督の彼に限らず、僕の身の周りには独立している人、独立を目指している人が少なくありません。
デザイナーだったり、エンジニアだったり、映像制作だったり、いわゆる「フリーランス」と呼ばれる人たちです。
相対的に見てうまくいく人、苦戦する人がいるわけですが、それを分ける要素が何かというと、感覚的には技術力よりも営業力であることが多いように感じます。
どんなに技術力があってクオリティの高いデザインができたとしても、営業力がなければ新規の仕事を獲得することもリピートしてもらうこともできません。
逆に多少技術力に難があったとしても、プロジェクトが円滑に進んで納品されることが確かであればリピートされます。
ここで言う「営業力」というのは、スーツを着ていて礼儀がなっているとかそういうことではなく、アニメ監督の彼が体現しているような、クイックレスポンス、ディレクション能力、企画力といった、クライアントが最終的に感じる満足度を上げるための様々なコミュニケーション要素です。
ここがしっかりしていると安定的に仕事が回って、仕事につながるかどうかも分からないような営業に時間を割く必要もなくなります。

補足しておくと、ランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシング系のサービスがフリーランスの新しい働き方を提示しているという状況ではありますが、クラウドソーシングでも同様に営業力が見られてそれがクライアントからの評価として残り、やっぱり同様に格差がついていくことになります。
またフリーランスとしてやっていく上でクラウドソーシングを使うとオフショア(海外のリソースを使っている日本人や、生活コストの低い海外に住んで仕事を受けている日本人)と競合するのでかなり相場が低く、なかなか余裕のある暮らしはできないのが現状です。


クライアントはなぜ営業力のある人間に仕事をお願いするのか


クライアントの大半はサラリーマンです。サラリーマンが一番避けたいのは失敗することです。納期を守れず社内全体のプロジェクトが滞るようなことになれば、どう責任を取ったら良いか分かりません。昇給が難しくなるだけではなく、チーム内での信頼まで失ってしまいます。
フリーランスの人には平気で数日メールの返信をしない人もいますが、そういうことをされるとたまらなく不安になるわけです。だから密にコミュニケーションを取ってくれることは、リピートする/しないの最低条件と言っても良いと思います。
他にも「楽しくプロジェクトをしたい」とか「良いアウトプットを生みたい」といった要望はありますが、飛び抜けて大切なことが「信頼できる人と仕事をしたい」です。
フリーになったら人間関係やいろいろな制約から自由になれるイメージがあるかもしれませんが、フリーランスの方が営業力はより求められるようになります。
そういった意味でフリーランスになることを検討している方は、技術だけ磨いていくのではなく、社内でのコミュニケーションなど営業力に直結するようなタスクにも真剣に取り組んでいくのが良いと僕は思っています。


最後になりましたが、アニメ監督の友達の名前は山元隼一
バンダイナムコやNHKなどで、最近も色々と活躍しているようです。
イラストやアニメ制作の案件があったら、すごくおすすめなので一度声をかけてみてください!

私はベンチャーナウというウェブ界隈では有名なメディアさんで記事を連載させていただいているのですが、先日「スタートアップが受託を通して小銭を稼ぐということ」という記事を書かせていただきました。

要約すると、
・私たちニューロープは第三者割当(出資)を引き受けてもらっているためある程度の資本金がある。
・それでも受託(お客様から発注いただく仕事)で企画やデザイン、開発の仕事をしている。
・資金に余裕がないとトライ&エラーできないため、日々お金を稼いでサービス開発に充てている。
というもの。

「出資を受けた会社は自社サービスの開発に専念して、とにかくスピーディに開発を進めるべき」という考え方があるのですが、私たちは自信があるサービスだからこそ、試行錯誤する時間を取って何とか成功まで持っていきたい、と考え、受託の仕事をしています。
この記事は「スタートアップは受託をすべきではない。いや、した方が良い」という昔から飲み会なんかでも繰り返されているテーマに切り込んだものであることもあって、NewsPicksでも話題にのぼりました。
(注:NewsPicksというのは経済に特化したキュレーションメディア。ウェブ上の様々な経済に関するニュースについて、感度の高い方々が所見を述べるという非常にためになるサービスです。)
一時期はビジネスカテゴリの人気3-4位あたりとうろうろとしていて、コメントも50件近くいただくことができました。ここでコメントをいただくと、コメンテーターのTwitterやFacebookにも情報が拡散されていくので、最終的にかなりの人の目に留まることになります。賛成意見、反対意見ありましたが、経験に基づくコメントが多く、どちらも参考になりました。情報発信することのメリットの一つはフィードバックを得られることですね。

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NewsPicksビジネスカテゴリ3位の図


今回はこのNewsPicksで話題にのぼったおかげで、実際にお仕事をいただける運びになりました。記事の末尾に「というわけでお仕事募集しています。ご用命の方はご連絡ください。」というような宣伝を入れさせていただいたのですが、共感していただいた読者様からお声がけいただいたのです。しかも非常にやりがいのある仕事で、長い良いお付き合いになる予感がしています。
昔から受託業と言えば人脈を辿ってコーポレートサイトを作ってブログを地道に更新して、引き合いがあればヒアリングにうかがって見積を出して…というような流れで営業には苦労することが一般的ですが、今回の件は受託でもソーシャルマーケティングが成立した例としてちょっと面白いなぁと思っています。

SNSが生活に浸透してきて、個人の情報発信はレバレッジが効きやすくなっています。本当の気持ちを文章にしたら(全員ではないものの)読む人の心に響いて広まって、願いを引き寄せてくれるような性質があります。そういった意味で、すごくアナログだけど自分自身と向き合うことや、そこから言葉を紡ぎ出すことはこれからますます重要になってくるような気がしています。(もちろんどういう切り口であれば拡散しやすいかなどのノウハウも。)
あらためて情報発信の大切さ、可能性を感じた顛末でした。
いただいたお仕事には気を引き締めて取り組んでまいります! 

企画会議が重なったり、考えさせられるような本を読んだり、悩ましいことがあると頭が働かなくなります。
あれを考えてこれを考えて…結局どれも集中して考えられなくなるときがあります。
パフォーマンスが落ちて時間も足りないし最悪。

そんなとき僕は開き直って思いっきり眠ることがあります。 
眠るといろんな夢を見ます。 
考えていたこととリンクするような夢も見ます。
起きると頭がクリアになっています。
砂糖が温かいコーヒーに溶けるように、悩んでいたことが見えなくなっています。
忘れているわけではないのに、もう見ることができなくなっているんです。

時間がなくても眠るんです。
起きてても何もできていないなら眠った方が良いんです。 
眠らず働くのが格好良いような風潮があって、気持ちは分かりますが、長い目で見ると合理的ですらありません。 
思いっきり眠って悩みも吹き飛んで仕事も捗る。
こんなに良いこと、なかなかないじゃないですか。 

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