会社を立ち上げてもうじき6年になる。
スタートアップの文脈で見ると、1年を待たずに2桁億円でM&Aする会社もあれば、6年もあったら上場している会社だって珍しくない。
ニューロープはどうかというと、M&Aにしても上場にしてもまだちょっと先の話になりそうだ。
つまり経済的に一気に拡大していくという点において、短期間で増床を繰り返すきらきらベンチャーと比べたらうまくいっている方ではない。

この6年間、何度も大変な目にあった。
キャッシュ的な意味で何度か死線をくぐったし、大人の事情に巻き込まれてすごく悔しい思いをしたことも何度かある。うまく結果を出せずに期待してくれたお客さんにご迷惑をおかけしてしまったこともある。これについては今年・来年としっかりと貢献して報いたいと思う。

バッドニュースが顕在化する度に、みぞおちにもやもやとした球状の違和感が生まれるのを感じる。
その違和感はサイズも密度も大したものではないのに、希望や自信や活力といったあらゆるポジティブな気持ちを消臭剤のように引き寄せて、吸着して、なかったことにしてしまう。何をどれだけ詰め込んだって埋められない。
身体には疲労感だけが取り残されて、しばらくは動く気さえもなくなる。全身が酸化してしまったような感覚になる。

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ただ、僕は「起業しているから特別に大変なことが色々あるんだ」とは考えていない。
たぶんサラリーマンをやっていたって同じような気持ちになることはあるだろうし、その回数も程度も大差ないだろうと思っている。
どこで何をしていたって僕は挑戦を止められず、失敗しては勝手に凹んできた。

起業していると、多くの人が経験していないような経験をしているように見せかけられるし、多くの人はそれを見聞きして「よく分からないけどとりあえず大変なんだろうな」と想像する。
でも考えてみてほしい。どんなハプニングが起きたところで、それを受容するレセプタである僕は、あなたと同じ、人間だ。苦しいと言ったって限度がある。そしてあなた以上に苦しんでいるということは、おそらくない。苦しみに上も下もない。

だから僕は起業家が「HARD THINGSだ」といって自分の苦労を特別視しているのを見て、滑稽だと思うことがある。
そもそも現世というものがHARD THINGSに満たされていることは大昔のインド人が一通り指摘している。

「起業は大したことじゃないからみんなやりなよ」と言いたいわけではない。
苦手なこと、難しいことをやって失敗するのは苦しい。苦手だったらやらない方が良い。苦手なことに時間を使いすぎると、限られた人生の中で収支が合いにくくなる。
人には得手不得手がある。だから取り組んでいる対象、立場、モチベーションをかけ合わせると気が遠くなるくらい分散する。分散しているように見える。それで良い。

先述のとおり、僕たちは苦しみや喜びといった感覚のレイヤーにおいて、ドメイン、立場、モチベーションを超えて理解し合えるものだと思っている。誰だってみぞおちのあの違和感を抱えている。
あなたは僕の共感者になりえるし、僕はあなたの共感者になりえる。同じようなことをしている人たちだけで固まっているより 、共感をベースに広がりを持った方が絶対に楽しい。山頂や海辺がそうであるように、遠くまで見渡せた方が人は安らぐことができる。
だから次会ったときには、あなたのことをもっと踏み込んで話してもらえたら嬉しい。