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女性向けのサービスを展開するために、意識的に女性の声を聞くようにしているのですが、皆さんの口から「はあちゅう」という名前が度々出てきます。男性はあまりご存じないかもしれません。いわるゆアルファブロガーさんで、恋愛をテーマにしたリアルなエピソードやそれに対する考察をブログや各メディアで発信なさっていて、女性の心をとらえて放しません。

すごくきらきらしているわけではなく、どろどろしているわけでもなく、劇的なドラマがあるわけでもなく、言ってしまえばマジョリティの恋愛をなさっているのですが、それを女性が「そうそう!」と頷けるように明文化しているところがすごいのだと思います。
恋愛の感覚は非常にもやもやしていて、おそらく言語化できる人はあまりいません。言語化できないと自分がどういう状態なのかもよく分からないし、これからどうしたら良いのかもいまいち分かりません。それが明文化されていると、一歩先に進むことができます。一歩先に進んだところでその先にはもやもやが続いているのですが、数学者や科学者が少しずつ真実の輪を広げていくように、確かな一歩が感じられ、少し納得できて、一服つくことができるのだと思います。

そのリアリティから、江國香織さんに少し近いような印象を受けました。ただし江國香織さんの小説は非常にリアルで正視できないようなところがあると個人的には思っているのですが、これは過去を振り返って現在の感情を乗せずに書いているからであって、はあちゅうさんはあくまでも振り返った上で「それを今後にどう活かすか」という明るい視点で書いているので、性質としては似ているものの、読んでいて暗い気持ちにならないのが今の若者に合っているように感じました。
等身大の恋愛を歌にしているaikoや西野カナと(深度やベクトルは全然違いますが)近い系譜だというと分かりやすいかもしれません。以前は純文学だったものが、今は歌やエッセーとして、変わらず求められているのです。


僕は成功モデルを分解して考えるくせがあるのでここまでちょっと分析的に書いてしまいましたが、単純に一読者として学ぶこともたくさんありました。なるほどと思った部分を少しだけ引用させていただきます。

「時には、まわりの目なんて気にせず大胆に立ち振る舞うこと」
「努力で全てをねじ伏せてきた人たちも、努力ではどうにもならないことがあるのを知り、その中で工夫したり葛藤したりすることで、人間らしさを取り戻すんだと思う。」
「自分を変える作業を、相手のためと錯覚していろいろ「してあげてる」気持ちになっちゃったりもする。」
「今までは彼を忘れる努力をしていたけど、忘れないほうがよっぽど大事だって思えました。忘れていたことは全部、それが起きた瞬間はなんでもないことだったけれど、後から振り返ると、とても愛おしくて、特別で」

男である僕がaikoを聞いても何となく気持ちが分かるように、女性の視点から書かれていてもはあちゅうさんの考え方にも共感できるところがたくさんあります。感覚的には数学者や科学者と並列の存在として、敬意を払いたくなります。
生物の種として、恋愛は本来すごくウエイトの大きなもののはずで、どこまでいっても人間はここに振り回され続けることになります。女性の方が男性よりもハッピーになることに対して貪欲だから、感覚的にそのことが分かっている。男性はなぜか感覚的にそのことが分からない。でも考えるべきだし向き合うべきです。本来狩りのできなくなった男は用なしなのだから、定年のある現代において仕事にあぐらをかくことが許されないのは明白です。

あとそもそも超クールなウェブサービスやアプリに熱狂しているのはほんの一部の人間です。みんな恋愛や他のことで頭がいっぱいなんです。最先端のメディア論とかマーケティング手法を学ぶのも良いけど、はあちゅうさんの恋愛炎上主義を読んで人間の血を取り戻した方がビジネスパーソンはうまくいくと思います。

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