カテゴリ: ビジネス

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大学院卒業と同時に独立した友達


大学の頃の同級生に、院の卒業と同時に就職せずそのままフリーのアニメ監督になった人間がいます。
卒業していきなり独立することの是非を問う議論は昔からありますが、今回そこは焦点ではありません。
彼は学生の頃から外部企業の仕事を請け負っていたこともあり、クライアントもパートナー(アニメーターさんなど)も十分に確保できていて、最初からオフィスも構えてビジネスを軌道に乗せることができました。

僕は院には行かずサラリーマンになったので、その頃すでに3年目。ある程度決裁権をいただいていたこともあり、その友達を応援するつもりで仕事をお願いしました。最初は漫画の表現を利用したDMを制作する軽めのお仕事でした。
他のフリーランスや制作会社さんと仕事をすることはそれまでにも何度かありましたが、驚かされたのは彼のレスポンスの早さ、段取りの迅速さ、企画の提案力、コミュニケーション能力です。軽く概要を伝えただけですぐにスケジュール感や絵コンテ付きの企画が返ってきて、その勢いで面白いくらいとんとんと制作が進んでいきました。
応援するつもりが逆に助けられてしまったのです。このとき彼が軌道に乗った理由がよく分かりました。途中から僕自身がリピートしたい気持ちでいっぱいになっていました。


独立してうまくいく人、苦戦する人


アニメ監督の彼に限らず、僕の身の周りには独立している人、独立を目指している人が少なくありません。
デザイナーだったり、エンジニアだったり、映像制作だったり、いわゆる「フリーランス」と呼ばれる人たちです。
相対的に見てうまくいく人、苦戦する人がいるわけですが、それを分ける要素が何かというと、感覚的には技術力よりも営業力であることが多いように感じます。
どんなに技術力があってクオリティの高いデザインができたとしても、営業力がなければ新規の仕事を獲得することもリピートしてもらうこともできません。
逆に多少技術力に難があったとしても、プロジェクトが円滑に進んで納品されることが確かであればリピートされます。
ここで言う「営業力」というのは、スーツを着ていて礼儀がなっているとかそういうことではなく、アニメ監督の彼が体現しているような、クイックレスポンス、ディレクション能力、企画力といった、クライアントが最終的に感じる満足度を上げるための様々なコミュニケーション要素です。
ここがしっかりしていると安定的に仕事が回って、仕事につながるかどうかも分からないような営業に時間を割く必要もなくなります。

補足しておくと、ランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシング系のサービスがフリーランスの新しい働き方を提示しているという状況ではありますが、クラウドソーシングでも同様に営業力が見られてそれがクライアントからの評価として残り、やっぱり同様に格差がついていくことになります。
またフリーランスとしてやっていく上でクラウドソーシングを使うとオフショア(海外のリソースを使っている日本人や、生活コストの低い海外に住んで仕事を受けている日本人)と競合するのでかなり相場が低く、なかなか余裕のある暮らしはできないのが現状です。


クライアントはなぜ営業力のある人間に仕事をお願いするのか


クライアントの大半はサラリーマンです。サラリーマンが一番避けたいのは失敗することです。納期を守れず社内全体のプロジェクトが滞るようなことになれば、どう責任を取ったら良いか分かりません。昇給が難しくなるだけではなく、チーム内での信頼まで失ってしまいます。
フリーランスの人には平気で数日メールの返信をしない人もいますが、そういうことをされるとたまらなく不安になるわけです。だから密にコミュニケーションを取ってくれることは、リピートする/しないの最低条件と言っても良いと思います。
他にも「楽しくプロジェクトをしたい」とか「良いアウトプットを生みたい」といった要望はありますが、飛び抜けて大切なことが「信頼できる人と仕事をしたい」です。
フリーになったら人間関係やいろいろな制約から自由になれるイメージがあるかもしれませんが、フリーランスの方が営業力はより求められるようになります。
そういった意味でフリーランスになることを検討している方は、技術だけ磨いていくのではなく、社内でのコミュニケーションなど営業力に直結するようなタスクにも真剣に取り組んでいくのが良いと僕は思っています。


最後になりましたが、アニメ監督の友達の名前は山元隼一
バンダイナムコやNHKなどで、最近も色々と活躍しているようです。
イラストやアニメ制作の案件があったら、すごくおすすめなので一度声をかけてみてください!

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「人脈」という言葉を使うときな臭いけど、特に中小企業は一つの業務提携が会社の大きな躍進につながったりするので、僕は積極的に人に会うようにしています。交流会にも参加するしCoffeeMeetingも活用しています。交流会で名刺交換しまくったり、自分の事業を何回も何回も説明するのは気が滅入るけれど、それも仕事だと割り切っています。

社長さんとお会いするといつも「相手のために何ができるか」を考える

そんなこんなで最近いろいろな社長さんともお会いしています。会社の代表同士で会うと、当然仕事の話をします。お互いに何をやっているか。どういった課題感があるのか。お互いにどういったことを提供できるのか。
そんなビジネスライクな話をしていて疲れないかと思われそうですが、双方にとって仕事が生き甲斐であり、趣味でもあるので、盛り上がりこそすれ、疲れることはあまりありません。鉄ちゃん(注:鉄道オタク)が鉄道の話をしているときと脳内物質の構成はそんなに変わらないと思います。

そしていつも登場する、象徴的な決まり文句があります。
「どなたかおつなぎしてほしい人はいませんか?」というものです。
話しているうちに、事業・情報・人の面で何か相手に貢献できることはないかと、お互いに前のめりになっていきます。これは「ギブしたらテイクできるから」という単純な図式ではないような気がしています。
お互いに事業をしている。同じような苦労をしている。それだけでどこか共感できる部分があり、自然と「相手のために何ができるか」を考えるようになります。

ギブ&テイクは実績よりも気持ちの問題

この「相手のために何ができるか」という思いには双方向性が欠かせません。よく言われるように、お互いに貢献の意思があるときギブ&テイクは成り立ちます。「リターンがないならギブできない」というケチな考えをしているわけではなくて、「搾取することだけを考えているような人を応援する気になれない」という感情的な理由が絡んでくるためです。
ギブ&テイクは、実績面で釣り合っている必要はありませんが、気持ちの面では釣り合っている必要があります。人間は経済合理的である以上に感情に左右される生きものです。少なくとも僕はそうだし、お会いしている方々にもそのような人が多いように感じます。実績のことを考えたらひよっこの僕なんてそもそも相手にしないと思います。
ギブ&テイクはドライな考え方のように見えて、非常にウエットな、人間的なコミュニケーションです。ビジネスとか人脈とか一見きな臭いですが、中に入るほど人間的なコミュニティであることが、足湯のように沁み入ります。

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