カテゴリ: ビジネス

まず最初に断っておくと「起業するかどうか」「資金調達するかどうか」は、当人のモチベーションに依存するものだし、僕は一概にどちらが良いということを論じるつもりはありません。
僕自身も起業してからめっちゃ苦労しているし、それを乗り越えられるか、あとから振り返って良かったと思えるかは大いにパーソナリティに左右されることだと思います。
中には苦労せずにうまくいったベンチャーもあるでしょうが、そんなのは本当に一握りで、たった一度の人生を博打に投じることを僕は推奨する立場にはありません。
仕事が終わったら高校の頃からの友人と野球観戦に行ってビールを飲むような日々も素敵です。僕は不器用なのもあってそういう生き方を選ぶことができませんでしたが、毎日笑って過ごすことができたら、世の中の仕組みがどうなっているのかとかどうでも良くて、純粋に幸せを感じられるに違いありません。

前置きが長くなりましたが、その上で「経験的な優位性」という一面から起業するメリットについて今回は記事にまとめます。
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みんなのアクセスできない経験にアクセスすることの大切さ

みんなと同じことをやっていても、みんなと違ったことをするのは難しいでしょう。
みんなが読んでいるのと同じ本を読んでも、なかなか周りと差をつけることができません。
横並びを前提とした学校教育の弊害が指摘されることが度々ありますが、その根源には「同じインプットから多様性が生まれにくい」という主張があるはずです。

ベンチャーの基本は、他人の気づいていない市場の歪みに気づいて、どうやってそれをうまくビジネス化するかというところに尽きると思います。
じゃあ一体どうやったら人と違うインプットを生めるのか。
下記に「アクセスしにくい経験」を整理します。
  1. お金がかかりすぎてアクセスできない
  2. 違法性が高くてアクセスできない
  3. 学ぶことが困難すぎてアクセスできない
  4. 極めて属人的な情報のため流通しておらずアクセスできない
「2」は諦めましょう。
「3」については比較的誰もが手を出しやすく、それゆえにこれ単体だと参入障壁が低めでもあります。プログラミングなどが分かりやすい例ですが、弁護士・税理士・社労士のように市場が飽和してしまうようなケースもあります。
同族経営の是非は置いておくとして、二代目・三代目が最終的に経営者として優秀である例が散見されるのは、「1」と「4」にアクセスできる環境に身を置けるからではないかと思われます。
特定の業界に就職すると、その領域における「4」を得られるので、その領域で起業した際の成功確率は高めることができるでしょう。

構造的には以上のように整理できるかと思います。
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起業や資金調達は手っ取り早い解決策

起業するメリットとして「極めて属人的な情報のため流通しておらずアクセスできない情報」にアクセスしやすくなることが挙げられます。
僕はファッション領域という、それまで業務経験のない分野で起業しました。おかげで大変な苦労をしました。
一方で、起業した途端に様々な情報に恵まれることになりました。
代表取締役という肩書はそれなりに役立つもので、様々なベンチャーの社長さんやファッション業界の方々とお話する機会をいただくこととなります。
それまで僕は本をたくさん読んでいましたが、本に載っている情報の魅力が相対的に色褪せることになりました。それくらい目のさめるような勉強をさせていただいたし、未だにそういった機会が絶えません。

また、ベンチャーキャピタルから資金調達することは「お金がかかりすぎてアクセスできない情報」を手に入れるチケットになりえます。
実際にサービスを作ってみて市場に問うと、貴重なフィードバックを大量にいただくことができます。
最初に作ったサービスが順風満帆でなくとも、このフィードバックを元に次のサービスを作って成功したスタートアップは少なくありません。
サービスを作るのにはお金がかかります。
いくらあれば良いということは言えませんが、少なくとも1つサービスを作って空振りしたら倒産するというようなイチかバチかの勝負をしかけるとストレート負けしてしまう可能性が極めて高くなります。

というところで、起業や資金調達が「みんながアクセスできない情報」にアクセスするための手段として有効であることは比較的クリアになったかと思います。

あくまでも起業や資金調達は手段の1つにすぎない

もちろん手段としてこれがすべてではありません。
他にもアプローチ方法は色々と考えられるでしょう。
例えば『ビザスク』のようなスポットコンサルサービスは数万円で「4」を叶えてくれます。
とりあえず海外に住んでみるというような手も有効でしょう。
VCに就職するとリスクテイクせずにどんどん「4」を仕入れられるかと思います。
そう考えていくと「1」が一番手の届きにくい、裏を返せば差別化につなげやすい情報なのかもしれません。
「他にもこんな方法もあるよ!」というのがあればぜひ僕も実践したいので、NewsPicks等でご意見いただけると嬉しいです。

皆さんはパーソナルスタイリングのサービスを受けたことはありますか?
サービスの存在自体を耳にすることがあっても、「余計にお金がかかりそう」といった理由でわざわざ調べてみるところまで気持ちが向かないという方が大半なのではないかと思います。
そんな方々におすすめしたいのが "アンシャンテ with D"。
詳しくは後述しますが、このサービスは3万円でDくんがスタイリングをしてくれるというもの。3万円にはアイテム料金も含まれています。ちょっとしたジャケットを買ったら3万円くらいかかることを考えると、ぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。

スタイリストのDくんは2018年4月現在、フォロワー数が217万を超えているインスタグラマーでもあります。若干22歳ながらもそのファッションセンスから世界中にファン層が広がり、フォロワー数で言うと日本人男性で4位くらいになるそうです。
テレビにも登場し、雑誌・スタイリングなど幅広く活躍しています。

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ここ最近、エアークローゼットを先駆けにZOZOTOWN、ストライプインターナショナルなどが次々サブスクリプション+パーソナルスタイリングに取り組んでいて、パーソナルスタイリングの効率化と民主化が一気に推し進められようとしています。
その一方で、Dくんは非常にアナログに、利用者一人ひとりを見てスタイリングをするサービスを原宿で提供しています。この「特別感」という点でオンラインサービスが勝ることはなかなかできないでしょう。

サービス料金の3万円は品代込み

筆者がDくんと出会ったのは、とあるファッションテックのイベントでのこと。
知り合い経由で紹介されて、そのときあまり長くは話せなかったのもあって「フォロワーが200万人を超えてるすごいインスタグラマー」というぼんやりとしたことしか分からなかったのですが、帰ってから改めて調べてみると、サービス内容に目を疑いました。

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メールで写真やスリーサイズを送ると、それを元にDくんがスタイリングを考えてくれて、後日原宿の店舗でアイテムを直接受け取るというものなのですが、すごいところが次の2点です。
  • サービス料にアイテム料金も含まれていること
  • アイテムの定価がサービス料以上であること
つまり3万円のコースを申し込むと、3万円分を超えるアイテムとスタイリングサービスを受けられるという内容になっています。
仮に商品を安く仕入れるルートがあったとしても、そもそもパーソナルスタイリングを受けようと思ったらサービス料だけで3-10万くらいはするものなので、Dくんが収益目的でこのサービスをやっているわけではないことは明らかです。
「ファッションドリーマー」を名乗るだけあって、ファッションの楽しさを純粋に知ってもらおうという、一種のソーシャル事業という位置づけのようです。
この善意を受けない手はないなと思い、その場ですぐに申し込みをしました。

純粋に楽しめるスタイリングサービス

サービスの流れとしては、Webから申し込み、入金をして、メールでスリーサイズや写真を送ると、Dくんがアイテムをセレクトしてくれるというものになっています。あとは原宿のショップで商品を受け取る指定日を待つばかり…。申込後はこの受取日が楽しみで仕方がありません。
そして昨日、ついに受け取りに行ってきました! 明治神宮駅からすぐの店舗を訪れると、Dくんと店長の平井さんがお出迎えしてくれます。
挨拶と軽い雑談の後、さっそく商品の受け渡し式が始まります。

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店舗でDくん(右)がお出迎え。商品を手渡ししてくれます。

商品を受け取った後は、店内でお着替え。
着用後は、Dくんにコーデのポイントを教えてもらいながら、首元や裾など細かいところを整えてもらいます。
気になる実際に受け取った商品がこちら!

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  • HYSTERIC GLAMOURのカーディガンジャケット
  • Saturdays surf NYKの赤いパンツ
  • ネイビーのTシャツ
  • Kate spadeの花のコサージュ
という4点セットを選んでいただきました。一点一点がかわいい上に、コーディネートのカラーリングが絶妙。赤いパンツが目立つかと思いきや、実際に袖を通してみるとオフホワイトのニットがコントラストを程よく押さえてくれて、きれいに馴染んでくれました。
着用後はDくんとの撮影会が始まります。

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ヒスのカーディガンジャケットは後ろのロゴもかわいいんです…!
コサージュのアクセントも付けてみたらなるほどという感じで、普段のコーデにも取り入れていきたいと思いました。
Dくん自らカメラを持って、たくさんの写真を撮っていただきました。ちょっとしたモデル気分を味わえます。

エンターテインメント性と実用性を兼ねたスタイリングサービス

実際にスタイリングを受けてみて、このサービスには2つの側面があるなと思いました。

一つはエンタメ性。
サービス申し込み後は、「どんな商品を選んでくれるのだろう」というワクワク感が続いて、当日が楽しみになります。
受取日はDくんに会えて、撮影会をして、そのままの服装で原宿を散策してというちょっとしたイベントデーになります。

もう一つは、実用性。
普段ファッションで冒険ができないという人にも、Dくんが遊び心を提供してくれます。
奇抜すぎて普段使いできないかというとそんなこともなく、かと言って無難なわけでもなく、ワードローブに程よく新鮮な風が吹き込むことになります。
今回の例で言うと、今まで筆者が持っていなかった「赤いパンツ」を使ってどういうコーデを組もうかなということをやはり考えさせられます。このとき、原宿はファッションカタログのような街なので、歩いていると赤いパンツをコーデに取り入れたおしゃれさんとも時々すれ違います。そうやっていると、ネイビーのジャケットと合うんだなとか、デニムジャケットと合わせるとかわいいなということがだんだん分かってきます。
おしゃれを楽しめて学べる原宿というお店の立地もすごく理にかなっているなと思いました。

ちなみに "アンシャンテ with D" のサービスを受けた他のお客さんたちのコーディネートがこちら。

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公開されているのがたまたまメンズばかりではありますが、レディースももちろん受け付けています。
イベント要素も強く、普段使いできるファッションアイテムがお手頃価格で手に入る "アンシャンテ with D"。
個人で申し込むのはもちろん、お友達と申し込んでみても楽しいかもしれません!

▶ アンシャンテ with D

2017年2月26日に電子書籍『デザインにセンスはいらない! - 知るだけで差がつくデザイン講座』を出版しました。
漫画調なのでストレスなく読み進めることができて、一方で内容は小手先のテクニックというよりも、しっかりと基礎理論から学べるように深掘りしているので、キャリアパーソンとして一生使える血肉にしていただけると思います。
お値段はコーヒー1杯より安い249円!

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ありがたいことにご好評をいただいていて、
  • グラフィックデザイン
  • デザイン
  • 芸術理論・美学
の各カテゴリーで発売日からずっと1位をキープしています。(2017年3月2日現在)
今回は書籍の制作段階から1位キープに至ったまでの裏話を記事にまとめます!

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書籍『デザインにセンスはいらない!』はどういった体制で作られたのか

この電子書籍、出版社を介していない、いわゆるダイレクト出版です。
実際には2人体制で制作されています。
著者: 酒井聡
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著者は私、酒井聡です。
学生の頃のアルバイトから始まって、デザインワークをかれこれ10年くらい続けています。
社会人になってから、情報誌やウェブメディアの編集経験もそれなりに積んでいます。
htmlも普段から業務で書くことが多いので、書籍用のファイルを作るためのxhtmlの編集も特に問題なくできました。(詳細は作り方を紹介している記事に譲ります。)
イラスト: 山元隼一
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イラストの担当はアニメ作家・アニメ監督として活躍している山元隼一。
東京都の選出するアニメクリエイター8組にも選ばれている、気鋭の作家さんです。
手がけた作品は「熱血人面犬」「ジョブチューン」「トラウマスター」など多数。
酒井とは大学の研究室が一緒で、大学の友達の中では一番一緒に昼飯を食っている気がします。
公式サイト: http://falcon-one.net/ 

デザイン、イラスト、編集、コーディングといった制作に必要なスキルは網羅できているので、特に困ることもなく、双方本業の合間に時間を取って、2か月くらいでコツコツと作り上げました。

書籍『デザインにセンスはいらない!』はどのように売られたのか

1. 知り合いに告知する
イラストの山元と著者の酒井が頑張ってFacebookで知り合いに告知しました。
これはまぁ誰もがすることだと思います。
ちなみに酒井のFacebookフレンドは1,000人弱。交流会とか苦手でほとんど顔を出さないので、積極的なCEOさんと比較すると決して多い方ではないと思います。
2. オウンドメディアで宣伝する
もう一つ、これは去年から仕込んでいた秘密兵器なのですが、クリエイターを支援する『AI-CATCHER(アイキャッチャー)』というWebサービスを酒井と山元、GD(仮名)の3人で運営しています。
ここに思いっきり書籍の宣伝を埋め込んでいます。

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アイキャッチャーはメディアやブログをマンガ化することのできるサービスです。
山元隼一のイラストを初めとして、500点近くの素材が商用フリーで配布されています。

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サイトに組み込まれている画像編集ソフト『AI-MAKER』を使えば、IllustratorやPhotoshopなどの高価なグラフィックソフトを持っていなくとも、使いこなせなくとも、素材をオリジナルにカスタマイズできます。
ウェブベースで動き、専門知識も不要。
ブログのアイキャッチ画像を作ったり、ちょっとしたバナーを作ったりするのに最適です。
こんな見出し画像を簡単に作れます。

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このサービスはまだβ版ながら、2016年の10月から公開していて、今は月間3,000人くらいのクリエイターに利用されるくらいには育ってきました。(※まだまだここからが伸び盛り!)
このため、3,000人くらいのクリエイターに毎月書籍の宣伝ができるわけです。
出版社を通さない出版の最大のハードルは流通にあるわけですが、これを何とか攻略するのが最大のポイントになってくると思います。

書籍『デザインにセンスはいらない!』で儲かるのか?

kindle direct publishingで発売していて、単価は249円。
販売の70%が出版者の取り分となります。ちなみに249円未満の価格設定にすると、出版者の取り分は35%に半減します。
実際には249円に消費税も含まれているため、出版者のロイヤリティは1冊あたり159円となっています。
ということは、1日6冊でも細々と売れたら月の収入は3万円くらいになります。
頑張って10冊くらい出版したら毎月30万円入ってくるという構図も十分に考えられます。

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出版社経由で本を出すと印税10%(kindle direct publishingの1/7)とはよく言われる話ですが、3.5倍の価格設定にした上に2倍売るみたいなハードルを考えると、kindle direct publishingという選択肢も悪くないと思えてきます。
カテゴリー1位を取れば、そのカテゴリーの本を買いに来た消費者にもリーチできるので、ランキング効果で更に売上が伸びていくことも期待できます。

じゃあ出版社はいらないのか?

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この流れでこのテーマだと「出版社はいらないよね」という極端な結論が期待されそうですが、個人的には出版社の持つ編集機能と流通機能は付加価値が高いと思っています。
日本の編集者のレベルは高い
アメリカの翻訳ものとを比べると、日本の書籍の編集のレベルは非常に高いと思います。アメリカの翻訳ものが20ページで済むような内容を500ページに渡って繰り返しているものが多いのに対して、日本の書籍はしっかりと情報の整理がされていてムダが少ない傾向にあります。
書店は最も合理的な広告塔
また、そうは言っても書店に並べられる魅力は大きいものです。
本を買いたい人がやってくる書店に陣取るというのは、一番合理的な広告手法だと思います。
Web業界にいたら忘れがちなことですが、Webの住人は全体から見ると決してマジョリティでもありません。

パブリッシャーに相談するのは "売れてから" でも遅くはない

紙の本を流通させるには、コストがかかります。
紙の本として入稿データを作るのも手間ですし、地味にすごい校閲にはマンパワーが求められ、印刷・製本するために印刷所が稼働し、流通するには物流機能が一通り必要になります。
これだけのコストをかけるからには、初版として3,000部は最低でも必要だと言われています。
編集者さんは「この企画で本を作ったら最低でも3,000部本当に売れるんだっけ」ということを事前に精査します。類書がどれだけ売れているかとか、著者のネームバリューや販路がどれくらい実売に結びつくかとか、そういうエトセトラを考慮して判断します。

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何かストーリーを実写化したり、アニメ化したり、商品化したりするのも構図としては紙の本と変わりません。
初期コストが大きくかかるために、「本当に売れるのか」を精査する必要があります。
だから伸るか反るか分からない新人監督よりも、有名な熟練の監督に依頼が集中します。
オリジナルの脚本よりも、既に売れている小説や漫画を原作とした映画やドラマが作られます。

だから僕たちは自ら「アイキャッチャー」という販路を作っています。
「売れた」という事実が何よりも説得力のあるエビデンスになります。
自分たちで色々売ってみて、売れたらパブリッシャーの力を借りて、更に洗練させてより多くの人たちに提供していく。
そんな流れを作っていけたら良いと思っています。


最後に、もう一度宣伝をば…。

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『デザインにセンスはいらない! - 知るだけで差がつくデザイン講座』、コーヒー1杯より安い249円で販売中です。
「読みやすい」「ためになった」と内容に関しても良いフィードバックをいただいております。
ぜひぜひデザインも分かるビジネスマンになるための礎としていただけると幸いでございます! 
そして出版社さんからのお声がけもウェルカムでございます。売れます! 

学生が起業を学ぶことのできる「ウィルフ」というビジネススクールがあります。
アントレプレナーイノベーションキャンプというイベントで代表の黒石さんとご一緒した縁で、先日メンターとして授業におじゃましてきたのですが、このビジネススクールのカリキュラムがなかなか奮っています。
先輩起業家からビジネスのノウハウ、プレゼン、資金調達などについて幅広く学びながら、受講期間中に3回、実際にビジネスを起こすというスパルタぶり。
1回目はインターネットを使って、2回目はイベントなど何かしらリアルなかたちで、3回目は制約を設けずに、実際にお金を稼ぐということをするそうです。それぞれ期間は2週間。
受講生によっては2週間で100万円以上の粗利を叩き出す強者もいるんだとか…。

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社会人経験が10年あったって、自分でビジネスをやれと言われてできる人なんて一握りだろうと思います。ポンと事業を始めて100万の粗利を出せる人なんてほとんどいないでしょう。
僕も、自分がそれをやれと言われたらちょっと憂鬱になってきます。

けれど、憂鬱になるようなプログラムだからこそ、大いに実用性があるのだと思います。
ビジネスをやることは大変だし、最初に立てた仮説はそうそううまくいくものではありません。やってみると意外と大変だぞということにすぐに気づく。やり方を変えてみてもなかなか状況は好転しない。悠長に構えていると1週間なんてすぐに過ぎます。
いよいよ慌ててできる限りの手を尽くして、ようやくちょろっと売上が立つ。その金額は、2週間普通にアルバイトしていたら稼げたであろう金額には遠く及ばないものだったりする。
自分の無力さに打ちひしがれていたら、後2回もこれがあるんだということを思い出す。考えるだけでも心が折れそうになる…。

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もう、まんま起業家が体験するような筋書きです。
このカリキュラムを最後まで走り抜けたら、知識としてのインプットの他、下記のような成果が得られるでしょう。

- 物事がなかなかうまくいかないことを経験する。
- 仮説がうまくいかない前提で、手を尽くすということを経験する。
- 心が折れそうな状況になっても持ちこたえてやりきるということを経験する。

いずれも勤め人だとなかなかできることではありません。
起業家の立場から見ても、起業家として効率的に鍛えられるであろうことは想像に難くありません。
学生に限らず、ゼロから1を生み出す経験がなかなかできない社会人が受けても大きく成長できることでしょう。
実際に卒業生で事業を立ち上げた例は枚挙に暇がなく、資金調達に成功している例もあるそうです。プログラムを通してモチベーションが同じ仲間と出会えるのも大きなメリットの1つとしてありそうです。
企業にいったん就職した卒業生たちについても、他の同期とは動き方が変わってくるのではないでしょうか。

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ちなみに僕がメンターとしてお邪魔した翌日からビジネスを始めた学生チームは、大学の上級生が使わなくなった教科書を下級生に販売する取引の仲介を展開。
チラシを巻いたり実際に呼びかけたりと様々な施策を打ったものの、これがなかなかうまくいかず、1週間でピボット。
残りの1週間はマーケティング支援事業に専念して盛り返し、最終的には2週間で46万円の粗利に着地したそうです。
1週間で見切りをつけてピボットしたことも、最終的にしっかりと利益を残したことも見事としか言いようがないです。普通にすごい…。

メンタリングさせてもらったチームの所属する31期生のインタビュー記事


学生起業には賛否あるかもしれませんが、個人的にはやったほうが良いと思ってます。
社会人になると自分の食い扶持を稼ぐ必要があり、家族ができると養う必要がありと、どんどん無茶をできなくなっていきます。
学生にはそういった社会人について回るリスクがありません。仲間も学生から募れば、無休でしゃかりきに働くという夢のようなチームを作れるでしょう。
社会人経験を積んだほうが良いかどうかということを考える必要はあんまりない気がします。学生の間に立ち上げてうまくいったらそれで良いし、うまくいかなかったら就職すれば良いだけでしょう。


そういうわけで、メンターという建前でおじゃましたものの、自分の方が良い刺激をもらって帰ってくることになりました。
ウィルフのカリキュラムはよく考えられているし、将来的にでも起業を検討しているという学生にはおすすめです。
周りの受講生たちが頑張ってビジネスを立ち上げていく中、乗り遅れるというプレッシャーから自然とチャレンジに駆り立てられるという構図に自らを放り込んでみてはいかがでしょうか!

※本文には事実とちょっと異なる部分があるかもしれないし、カリキュラム自体にも日々変わっていく部分があると思います。正確な情報は説明会等で仕入れてください!

皆さん「オーディオブック」をご存知ですか?
文字の通り、ビジネス書や小説などの書籍をナレーターさんが読み上げる商品のことです。
どこに行くにも車を使うアメリカでは結構前から浸透しているようですが、日本にはいまいち馴染んでいません。

かくいう私もずっと気にはなっていて、活用しようと試みたこともあるのですが、そもそもオーディオブックを買ってからスマホに保存するまでも面倒だし、保存したオーディオブックを途中まで聞いて聞いたところから再開するというのも音楽プレイヤーの問題で面倒だしで、長続きしませんでした。(iTunesとオーディオブックの相性の悪さよ!)

このオーディオブック、Amazonがついに日本でも展開を始めて、上記の問題を一気にクリアしてくれました。

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Amazonの「Audible」がすごい

Amazonの子会社が提供する「Audible」がとにかくすごいんです。

- アプリ上ですべて完結する
オーディオブックのダウンロードから再生まで、Audibleのスマホアプリひとつで完結します。
途中まで再生したものは、途中から再開できます。
こうやって書くとできて当然のような気がしますが、この当たり前のことができるアプリがなかなかありませんでした。
※調べたところ、Audible進出前から展開していたFeBe!という和製のオーディオブックサービスも、いつのまにかスマホアプリを出していました。まぁ必要ですよね…。

- 落とし放題、聴き放題で月額1,500円
ここがまたすごいのですが、ビジネス書、小説、落語やらが月額1,500円で落とし放題、聴き放題の料金体系になっています。
AWAやLINEミュージックといった音楽の定額配信サービスが熾烈な競争を繰り広げていますが、オーディオブックについては、少なくとも日本では寡占状態です。
1,500円と言ったらビジネス書一冊分の料金。つまらなかったら聴くのをやめて削除しても懐は痛みません。
書籍も驚くほど豊富で、僕は既に100冊くらいが積ん読状態になっています。

オーディオブックは雑用に革命を起こしてくれる

「雑用」と表現すると怒られてしまうかもしれないけれど、いかにインプットとアウトプットの質を高めていくかという勝負をしているビジネスマンにとって、掃除洗濯などの家事や、経費精算や業務報告といった提携業務は、悩みの種なのではないでしょうか。

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人間は基本的にマルチタスクの苦手な生き物ですが、肉体的な運動と、頭を別のことに使うということは可能です。
つまり、洗濯や経費精算をしている時間にオーディオブックを聴くことで、ルーチンの消化試合のような時間がインプットの時間に変わります。
ちなみにオーディオブックの再生速度は3倍にまで早められます。個人的には2倍くらいが良いところなので、一冊読むのが平均3時間くらいになっています。まぁ紙の本で読んでもこれくらいかなという感覚です。

家事も積極的にこなすイクメンながらにインプットもばりばりなビジネスマン、憧れませんか?
ビジネスマンにおすすめのAudibleはこちら
※アフィリエイトでも何でもありません。


さて、個人のインプットを大事にしているニューロープはエンジニアを募集しています。
大企業なら業務時間にイヤホンを付けるなんてちょっと考えられないかもしれませんが、ニューロープはOKです。経理やら総務周りの仕事をしているとき、代表の酒井が率先してオーディオブックを利用しています。
時間を大切にしたいあなた、ぜひとも奮ってご応募ください!


「職務発明」という言葉を聞いたことはありますか?
世の中を変えるような画期的な発明は、ときに莫大な利益を生むことがあります。
企業としてはそんな発明を通してイノベーションを起こしていきたいところでしょう。
この発明は、当然ではありますが実際には企業に所属する従業員、または従業員のグループがすることになります。
ここで「発明は発明者のものか、発明者の帰属する企業のものか」という話になります。

職務発明は誰のもの?

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結論から言ってしまうと、企業に勤務する従業員が業務の範囲内で発明をした場合、就業規則などで指定することによって、この発明品を事業展開する権利を企業が引き継ぐことができます。これを指して職務発明と言います。
ただし、
会社は相当の対価を従業者に支払わなければならない(特許法35条3項)
という条文にある通り、発明者に相当の対価が支払われることが特許法で定められています。
この「相当の対価」というのは、一体いくらなんだという話に当然なります。
青色発光ダイオードの訴訟では、企業側に200億円の支払い判決が出たニュースはかなり話題になりました。

実際に特定の発明が莫大な利益を生んだとしても、企業はその発明のみに投資しているわけではありません。
例えば大きな製薬会社などは、大量のプロジェクトを同時に走らせて、そのうちひとつがヒットすれば良し、という具合にポートフォリオを組むような投資をしています。
それらのプロジェクトのうちどれが功を奏して、かつ他社を出し抜いて、市場にマッチして利益を生むのかということは不明です。分かっていたら苦労はしないでしょう。
ここで「このプロジェクトはたまたまうまくいった」という考え方をすると、そのプロジェクトに所属していた発明者が利益の多くを独占するというのは、企業側としても、他の従業員としても納得しにくい話でしょう。(もちろんプロジェクトの成功を左右するのは偶然だけではありませんが、その比率を見積もることはとても難しいことだと思います。)
大企業の中でもたまたま景況の恵まれた事業部に配属されたグループがボーナスにあやかる、という状況はあちこちにあると思いますが、これと似ています。

職務発明者に支払われる「相当の対価」はいくらが妥当か?

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ニューロープも一件特許出願を進めていて、特許事務所の弁理士さんとコミュニケーションを取る中で、この点について相談してみました。
「相当の対価」というのは一体いくらなのか。
相場観としては、下記のようになるそうです。

- 特許審査申請時:5,000円
- 特許登録時(審査を通過した際):5,000円
- ライセンス料などが発生したとき:利益の1〜5%
- 特許を売却したとき:売却額の1〜5%
- 会社を売却したとき:特許部分の価値を見積り、その1〜5%

この取り決めを就業規則に明記するか、発明者と事前に承諾書を交わすか、いずれかの方法で合意を取っておくことを進めるとのこと。
承諾書については後々のことを考えるとあった方が良いでしょうが、上記の相場はあくまでも特許事務所さんの感覚値なので、実際には企業や状況によって異なることも多いと思います。
ただし「相当の対価」という掴みどころのない数字を考えるスタート地点にはなるのではないでしょうか。

私個人の感覚で言うと、もっと大きな対価を支払っても良いのではないかという気がします。
キャッシュフローの安定している中小企業とは違って、ベンチャーはハイリスク・ハイリターン。EXITでメンバーに利益を還元できるよう仕込んでおくことが、代表の一つの仕事だと思っています。


さて、ニューロープは一緒に世の中を変えるような発明をしてくれるエンジニアを募集しております。
ご興味のある方は、ぜひWantedlyからご連絡ください!


ニューロープはちょっと前に、メルカリでゲーミングPCを買い足しました。
ゲーミングPCというのは、その名の通り、オンラインゲームなどを楽しむためにカスタマイズされたPCのこと。
そこそこ大きな筐体で、GPUのパフォーマンスの良さが特徴です。
画像認識系のdeep learningでは、このGPUが欠かせません。
deep learningにはとにかくリソースが必要で、AWSで回していたときは請求書が大変なことになりました…。

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そんなこんなで、10万円前後のゲーミングPCをメルカリで落とし、現在フル稼働させています。AWSからの請求書も落ち着きを取り戻して一安心です。
ゲーミングPCの良さは、その流通量にあるかと思います。機械学習用にエンタープライズ向けのサーバを買ったりすると高くつきますが、ゲーミングPCはそれよりも量産されているので、お財布に優しいんです。


さて、ニューロープに入社すると、これらのゲーミングPCを活用して、実務で人工知能に取り組むことができます。必要とあらばいくらでも買い足します!
Wantedlyでメンバーを募集しているので、良かったらぜひ応援、フォロー、エントリーしてください!
Wantedlyはこちら

また人工知能に関する開発案件も承っています。画像認識、テキストマイニング、グラフ理論など、酒井までお気軽にご相談くださいませ!

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僕はCUBKIというウェブサービスを運用していて、このサービスを通して影響力のあるモデルさん、読モさんたちとのリレーションを持っています。
彼女たちはみんなブログを長年運用していて、月間PVが10万を越える人も多く、中には100万を越えるような人もちらほらいます。
本業ではないものの、僕はこのブログを通して企業のプロダクトをプロモーションする、いわゆるブログプロモーションのお仕事をときどきさせていただいています。
その経験を踏まえて、「ブログプロモーションには意味があるのか?」というお話をします。

そもそもブログを見ている人はいるのか?

情報発信の場がSNSにシフトしてからもうかなり経ちます。mixiが流行りだしたのは10年も前の話ですよね。そのご時世に「ブログ」と言われてもピンと来ない人も多いと思います。
果たしてブログは未だに見られているのか。
結論から言ってしまうと、ブログはまだ影響力を持っています。
理由としては下記のようなものが挙げられます。
  • ブログは商品になります。SNSと違って写真、テキスト、リンクを組み合わせて記事を作ることができるし、広告を貼り付けることもできます。商売道具になるからこそ、今でもパワーブロガーはブログを多頻度で更新し、SNSからブログへとファンを送客しています。
  • アメブロにしてもライブドアにしても、ブログはSEOに強い性格を持っています。SNSやアプリにシフトしていると言っても、ウェブ上のトラフィックの多くは検索エンジンから生まれています。
つまりブロガーはブログを書き続けているし、検索エンジンやSNSからユーザーは流入している状況です。だから数十万、数百万PVのブログが珍しくないのです。

バズマーケティングに効果はあるのか?

未だに見られていることは分かった。でも読者はばかではない。記事と広告の違いくらい見分けられるのではないか。
“ステマ”という言葉も広く知れ渡り、インターネットユーザーのリテラシーが底上げされているのは事実だと思います。
一方でパワーブロガーさんたちがファンから支持を得ていることはそのPV数からも推し量れるし、「そのガウチョパンツはどこで買ったものですか?」というようなより詳細の情報を求める読者のコメントが付いていることからもうかがえます。
大切なのは「人と企画がマッチしているか」というポイントです。ブロガーさんの文脈に合わない商材を紹介してもらっても意味はないけれど、ブロガーさんが共感できるようなアイテムであれば読者の共感も得られる。そんな当たり前の構図を守るか守らないかで効果の有無は変わってきます。

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数万PVを叩きだしたファッションコンテスト企画

今までいくつか実際に施策を打ちましたが、例えばファッションコンテスト企画は成功した事例です。アパレル企業さんとタイアップし、モデルさん、読モさんたちに参加してもらってオンライン上でファッションコンテストを開催したところ、数万PVを叩き出すことができました。タイアップページのPV単価を相場の100円程度で試算すると、数百万円の広告効果があることになります。
これは下記の2点でファンの共感を得ることができたためと考えています。
  • ファッションをテーマとしているところ。モデルさん、読モさんとファッションはもともと相性が良く、「アパレル企業の多数ある商品の中からモデルさんが良いと思うアイテム」をチョイスしているため、企業が売りたいものをプッシュしているだけではなく、モデルさんの感性がそこにはプラスされています。
  • ファンがモデルさんを応援する構図があるところ。もともとファンの人たちには、ひいきにしているモデルさんを応援してい気持ちがあります。これはユナイテッドのCHEERZやDeNAのShow roomを見ていても分かることです。

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まとめ

読者モデルやパワーブロガーに影響力があるのは確かです。ただしただブログやSNSに書いてもらえば良いという話ではなく、企画をしっかりとフィットさせる必要があります。
バズマーケティングをお考えの方はお気軽にお問い合わせください!

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僕は中学生の頃から純文学を好んで読んできたけれど、社会人になった2009年から突然ビジネス書ばかりを読むようになった。
マーケティングの本、広告の本、アクセス解析の本、PHPの本、組織論、セールス、デザイン、セルフブランディング、運営管理、経理、ファイナンス、ビジネスモデル、栄養学、健康、失敗学、プロジェクト管理、情報設計、交渉学、認知心理学。
ビジネスのフィールドで真剣に闘っていこうと思ったからであるし、学んだ内容を翌日すぐに活かせることがすごく面白かったからでもある。
中小企業診断士や簿記といった資格もこのときに取得した。
どんどん新しいカテゴリの仕事に踏み込み、本を頼って切り抜けてきた。
反面で限界に苛まれるようなところがあった。
70点とか80点とかは取れる。でも100点とか100点を超えられるような気は全然しなかった。そのことには目もくれずに新しいことを学び続けた。新しいことを学び続けている限り自分の限界と向き合う必要がなかった。あらゆるジャンルの勉強をしてあらゆる要素を統合できる人間になればいつかブレイクスルーするという根拠のない見通しもあった。
純文学は読まなくなっていた。純文学は読むのに時間がかかるし、読んでも翌日活かせることなんてない。純文学を読むことに時間を費やすのは惜しい気がしていた。

「祈ればすぐに救われますよ」というコンセプトが多くの新興宗教に共通しているけれど、振り返ればそれに少し似ている。ビジネス書は読めばすぐに活用できる。それがビジネス書の売り文句だ。インスタントだから思わず飛びつく。
この売り文句は反面、底が知れいていることも暗に示している。100人が読めば100人が同じように解釈できる本は、それだけの情報価値しか持ちえない。勉強熱心な人たちはみんな大量のビジネス書を読み込んで、みんな極めて順調に突き進み、みんな同じ限界に行き当たる。
ビジネス書を読めば、チームや会社単位では活躍できる。知っているか知らないかの世界なので、知っていることが価値になり、役に立てる。チーム単位だと何よりだ。
でも視点を広げて企業間、世界規模で考えると、同じことを知っている人はたくさんいるので途端に価値が疑わしくなる。僕は起業してそのことを嫌というほど思い知った。10万分売れた本に書いてあることは10万人が知っている。10万人が知っていることを知っていても革新的なことは何一つできない。
ゴミや難破船や死体のような自律性を持たないあらゆる静物が潮の流れで同じ浜辺に行き着くように、勉強熱心なビジネスマンが大量に打ち上げられる浜辺がある。大海を縦横に立ち回っていたつもりが潮の流れに揺らいでいただけだったということを、そのときになってようやく気づく。


最近「編集者という病い」という見城徹さんの著書に触発されて久しぶりに文学寄りの本を何冊か読んだ。
例えばノンフィクションだけれど、山際涼司さんの「スローカーブを、もう一球」。
ボクシング、野球、スカッシュ、棒高跳びなど、様々なバックグラウンドを持つスポーツ選手を描く短篇集で、彼らの美学にフォーカスしている。厳しい世界で、なんとなく自分の限界を自覚できて、それでもスポーツに生涯を捧げるためには、ポリシーや美学が欠かせない。
特に棒高跳びのストーリーは象徴的だった。その選手は背が高くない。背が高くないことは棒高跳びにおいて不利で、身長や走る早さを勘案すると、跳べる高さの限界は見えている。その限界に黙々と挑戦する。いざ限界を超えたとき、次に何をしたら良いのか分からなくなる。
(ノンフィクションを文学にカテゴライズすることに疑問を感じる人は「聖の青春」「スローカーブを、もう一球」「フェルマーの最終定理」あたりを是非読んでみてほしい。人の生きざまは文学足りえる。)

スポーツには直線的なところがある。勝つという明確なゴールがあり、そのために鍛えたり戦略を練ったりする。直線的であるがゆえに競争は極めて厳しい。何を思って立ち向かうかというマインドの部分は、結果がシンプルだからこそ引き立つ。直線的なはずなのにマインドが人によってまったく違う。マインドが勝負を左右するのかは分からない。でもマインド以外に拠り所はない。

ここで文学を引き合いに出したのは、あくまでもビジネス書との対比で話を単純化するために過ぎないけれど、文学は100人が読んだときにそれぞれが違う解釈をする。よく分からない。明日使える類のものではない。けれど、そういうカオスな部分でしか人は人と違うことはできない。「スローカーブを、もう一球」から何が学べるのかということは明文化しにくい。だからこそ価値がある。誰もが行き着く潮目から漕ぎ出す推進力を秘めている。
ビジネス書を否定することはしない。そこそこのところまで駆け上がる手段として有用なのは間違いない。僕は6年間も読み続けてきたのだし、これからも読むに違いない。ただ誰もがアクセスできて誰もが理解できるビジネス書は、そこそこのところまでしか連れて行ってくれない。
その先に行くためには人との対話であったり文学であったり、よく分からないことを考え続ける必要がある。6年間遠のいてしまっていた文学に、僕は活路があるような気がしてならない。エモーションとか感性とか、得体の知れないものが人に残されたバリューなのだから。

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僕は2014年1月に会社を設立して以来、「こうすべき」「これはしないべき」ということばかりを考えて過ごしてしまったような気がします。
起業したのにと言うべきか、起業したからこそと言うべきか、間違えるのが怖くて、人に話を聞き、本を読み、どうするのが正しいかばかりを考えていました。
そんなことをしていても成功するはずがありません。”正解"に辿り着こうとすれば、他のみんなと同じところに行き着くはずです。頑張れば頑張るほどコモディティに陥ってしまうのです。
考えに考えた事業計画書はどんどん洗練されていったけれど、それは同時にどんどんありきたりなものにもなっていきました。

この状況から抜け出す手がかりはどこにあるのだろうということを考えていて、たまたま読んでいたドワンゴ川上さんの書籍に近しいことが書かれていました。そこには「自分でもどう転ぶか分からないようなことをすべき」「読めないことをするのが最高の差別化」「希少性が価値の源泉」というような意味のことが書かれていたんです。
ロジックとしては腑に落ちたものの、僕は頭が良くないのでこれをどのように自分に適用したら良いのか、すぐには解釈できませんでした。

しばらく考えながら日々過ごしていて行き着いたのが、すごく古典的な経営理論「企業文化は模倣されにくい」というものです。
メンバー3人のスタートアップだったので「企業文化も何もない」と無意識のうちに打ち捨てていたのですが、零細企業だろうが個人だろうが、生きてきた分だけカルチャーを持っています。価値観、経験則、スキルなどが複雑に絡み合ったカルチャーを誰もが持っていて、第三者がこれをコピーすることは非常に困難です。

「企業文化は模倣されにくい」
競争力の源泉がない零細企業や個人が価値を生むためには、この埃をかぶった(となぜか僕は考えてしまっていた)経営理論を持ち出さない手はありません。
2015年の抱負に取り入れたい、たった1つの観点。それは「自分のカルチャーは何か」ということをあらためて見つめなおすことです。これを色濃くすればするほど第三者が模倣することは困難になります。


参考までに、2015年に僕が守りたいと考えている2つのカルチャーをご紹介します。

・ロックであること
ピュアであること。反骨精神をなくさないこと。人から変だと思われても自分の信念を貫くこと。いつも自分なりに格好をつけて生きること。情熱的であること。楽しむこと。アーティスティックであり続けること。わくわくするような発想を大切にすること。

・ミニマルであること
雑念や物にとらわれないこと。いつも身軽でシンプルでいること。一枚の葉のようにふらふらとどこへでも行けること。人から奪わないこと。勤勉であること。受け入れること。


明文化するとどうしても一般論のようになってしまうものの、本人が解釈できたら十分ですよね。
カルチャーを色濃くすると「人に認められる価値」を生むことが難しくなる副作用も伴います。後から必死に考えて市場とすり合わせる必要性は前提条件としてあります。

オンリーワンであること自体の価値は長くなるので論じませんが、オンリーワン要素を活かすことは大切だと思います。「2015年の抱負」にはあなたのカルチャー要素も加えてみてはいかがでしょうか。

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